4564 誰もが陥るオチのない光景
帰りの電車で座っていたら、会社員風の若い女性ふたり(仮にAとBとする)が正面に立った。
Aは、妙に声が大きく静かな電車の中では結構目立った。
そこへ、もうひとり女性(Cとする)が乗ってきた。
「えー、まさかこんなところで!」
…と、声を上げる。
Cは、どうやらAの友人だったようだ。
並びは、座った僕から見て、C・A・B…となる。
声の大きいAは、Cとの会話で盛り上がり、その内容は、否応なしに聞こえてくる。
その会話の中で、AとBは、同じ会社の同僚で、いま料理教室からの帰りだと言うことが分かった。
しばらくすると、Aが自宅の最寄り駅に着いたらしく下車してしまった。
残された、CとBは、Aのいたスペースを詰めて、並んで立った。
騒々しかったAがいなくなったことで、急に静かになり、どこか、気まずい空気が流れる。
そりゃそうだ。二人は初対面なのだ。
Cが、自分のスマートフォンをチェックしたものの、あまりじっと見てるのも失礼かと思ったのか、ちょっとだけ見て鞄にしまってしまった。
あとは、ふたりとも正面をじっと見ている。
ふと、降りる駅はどこかとか、勤務先の最寄り駅はどこか?といった会話をする。
けど、質問と回答を繰り返すだけで、あまり会話のキャッチボールができず、盛り上がらない。
そして、やはり会話の中心は、共通の友人のことになる。
でも、その話題も、ほどなくネタが尽きて、また気まずい雰囲気に…。
正面の二人を残し、僕が先に下車してしまい、その後の行方を追うことはできなかったが、おそらく、大きな変化もなかっただろう。
A・Bもしくは、A・Cとだったらいいけど、お互いの共通項が見つからないBとCが残される状況は、何とも居心地が悪い。
じゃあ、どうしたらいいかっていう答えも、持ち合わせておらず、結局ただ時間が過ぎ去るのを待つのみ。
これは、誰もが陥る光景だけど、どうしたらいいかという階はなかなか見つかりにくい。