4263 “網棚を使う人が減った”という記事が酷い

社会・政治・事件,鉄道

このニュース(12345)の見出しを見たとき、いろいろと考えた。

鉄道界に衝撃、「網棚に載せない」多数派に 「不要論」も 札幌地下鉄は開業時から無し──背景に社会心理

混雑した車内では「網棚に置けばいいのに…」と思うことが、しょっちゅうあるな…とか。

そういえば、札幌市営地下鉄に乗るたびに網棚がなくて、ちょっとした違和感があるな…とか。

だから、「鉄道界に衝撃」とか「網棚に載せないという社会心理」とはどういうことなんだろう?と、ちょっと期待しながら読んでいくと…

大阪・ミナミで20~69歳の男女35人に「電車の網棚にかばんや荷物を載せますか」と質問すると、「載せない」か「基本的に載せない」という回答が約8割の27人を占めた。

うーん…まず感じたのは、これで、本当に一般的な意見を表しているとは言えるのだろうか?ということだった。

そして、この質問で最も多かった答えが、忘れ物をする危険を避けるために網棚に荷物を載せなくなっているという意見も、なんだか腑に落ちない。

網棚のない札幌市営地下鉄そして、札幌市営地下鉄には開業当初から網棚がないという話が紹介される。

駅間が短いことと、忘れ物の防止の観点からだ。

しかし、網棚があると思い込んだ乗客が、荷物を置こうとしてそのまま落下し、座席にいる人に当たってしまうことが、実際に起きていて、「なぜ網棚がないのか」「網棚をつけてほしい」という問い合わせがあるというエピソードも紹介。

あれ?

だんだんと、「網棚に載せない」多数派という見出しの記事とは思えない話の流れになってくる。

さらに読み進めていくと…

札幌市営地下鉄で存在しない網棚。大阪のまちの声でも「不要論」が出ているが、関西の鉄道会社はどう考えているのか。

35人に聞いただけで「不要論」が出ているというのって…こんな展開で強引に持論?を持ち出し、関西の鉄道会社に質問する。

南海電鉄の広報担当者は「そういえば、若い人で網棚を使っている人は確かに少ない」と認める一方で、「網棚を使う頻度は減ってきたかもしれないが、重い荷物を持っている人には必要。それにうちには、関西国際空港を結ぶ空港線もあり、(荷物が多い)海外旅行客も利用する」と網棚の必要性を説く。現在も朝の通勤時間帯は比較的、ビジネスバッグなどを網棚に置く光景が見られるという。

 

阪急電鉄でも「網棚の撤廃など議論したことがない」と明かす。兵庫県から福井県まで走る新快速電車を運行するJR西日本では「新快速電車などは長い距離を走るので、網棚は必要」と話す。

これを読んで、いったい鉄道界にどんな衝撃があったと解釈すればいいのだ?

そして社会心理というあたりも…

聖学院大学人間福祉学部こども心理学科の藤掛明准教授(臨床心理学)は「混んでいる中で、網棚にものを載せると、他人にひじがあたるなどして迷惑がかかる。また、泥などがついていたら落ちるかもしれない。ちょっとした他者との摩擦を避ける心理が働いているのではないか」と分析。現代社会では「他人へのバリアが高くなっている」と指摘する。

近年は、混雑率は年々減少しているし、他人にひじがあたらないように載せることなんて訳ないと思うけど…泥などがついていたら…って…なんだか無理矢理感いっぱいだ…。

また、電車内でスマートフォンによるメール作成やゲーム、あるいはパソコンによる作業などが行われている現状もあげ、「電車内では昔、新聞や雑誌を読むくらいだったが、集中して行う作業が増え、忘れ物をする可能性が高くなっていることも背景にあるのではないか」としている。

そもそも、本当に網棚に荷物をおく人が減ったということが事実ならば、その減ったという期間に、なんらかの社会的な変化が起きていないと説明が付かないわけで、そういった点から見れば、たしかにスマートフォンの普及や、それに集中してしまっている人が増えたという見方はできよう。

でも、この記事を振り返ってみると、視点は決して悪くないけど、裏付けがきわめて弱く、読後感がすごく悪い。

Posted by ろん