ポップ科学大画報1/原 克

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原 克
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日本は世界で唯一の被爆国だけあって、原子爆弾(原爆)については特別な考えがあるのは、当然だろう。

一方、原爆を使用したアメリカ側については、以前から「原爆の使用はやむを得なかった」という考えが一般的だというのを聞いたことがある。

でも、原爆の悲惨さをちょっとでも知れば、いろいろな考え方も出てくるのでは?と思うのだけど、そうならないのにはわけがあったのだ。

アメリカで、原爆をはじめとする核兵器に対して肯定的な考えを持つ人が多いのは、核兵器の“マイナス”を一切見せることなく、(為政者にとって)“プラス”になる部分ばかり強調されてきたからだった。

たとえば、本書で紹介されていた広告にはビックリした。

高性能オイルの宣伝で、FOR POWER AND PERFORMANCE!というコピーとともに、なんと原爆のキノコ雲が描かれていたのだ。

他にも、キャンディや、化粧品といった、いまでは考えられない分野の広告にも、キノコ雲が使われていた。

あまりにも無邪気な広告と言わざるを得ないが、それは、核兵器の驚異的なパワーを象徴的に表している=キノコ雲ということで、あくまでも、“記号”だったのだ。

本書の、後半は「科学と女性」、ナチスドイツのアウトバーンを中心とした雑誌の記事や広告、プロパガンダの紹介という構成だが、いずれにも共通して言えると感じたことがあった。

それは、本当に意図することを、カモフラージュするため、誰もがわかりやすい“記号”で隠すことがある…ということだった。

アメリカでは、特に戦後、女性の社会進出が進んでいたというイメージがあり、それは、本書で紹介されているような、広告や雑誌に登場する女性たちの姿そのものだった。

しかし、それは、現実から乖離し、あくまで“引き立て役”、“計測単位”として使われてきたという指摘は、興味深かった。実際、当時のアメリカは、極めて保守的だったと以前読んだ本で知っていたので。

ナチスドイツのアウトバーンも、国威発揚という意図があったというのは、比較的有名な話だ。

本当に意図することを、カモフラージュして、誰もがわかりやすい“記号”で隠す…それは、いつの時代にも、どんな国でもあるということだった。

もちろん、日本でもあるだろう。

先日も書いたが、原子力発電所などは、いい例だと思う。

マスコミは無邪気に原発をはやし立て、結果的に国民もそれに乗ったのだ。

歴史は繰り返すというが、ここまで見事に繰り返されるのを見ると、ちょっと怖くなる。

Posted by ろん