3239 ほんのちょっとのことなのに…
先日、地下鉄の駅でのできごと。
自動改札口を抜け、階段を下りようとしたところで、杖をついた女性が階段を上がってきたのが見えた。
どうやら、彼女は全盲らしい。
ちょっと気になって見ていたら、何か困っているようだった。
近づいていくと気配に気がついたようで、「すみません、お手洗いはどこですか?」と尋ねられた。
「階段を下りたところにありますよ」と教えた。
すると、礼を言って、いま彼女が上がってきたばかり階段を降りていった。まったく目が見えてないようであったが、スムーズに階段を下りていった。
これなら心配ない…と思ったが、ふと、さっき自分の言った言葉が気になった。
正確に言えば、トイレは階段を下りたところではなく、下りた先にあるのだ。
もしかすると、気付かないかも知れない。
慌てて、トイレの方に向かってみる。
すると、さっき向かったはずの彼女の姿がなかった。
どうしたんだろう?と、彼女を探してみると、ふたたび階段を上がっているではないか!
その横に、若い男性が付き添っていた。 気になってい見ていたら、どうやら、先ほどの自分のときと同じように、トイレの場所を聞かれて、答えて付き添っていたものの、肝心のトイレの場所を間違って認識していたようだ。
「トイレは階段の下ですよ」と、彼に伝え、それが彼女に伝わると、また階段を下りていった。
彼女は、しっかりとした足取りで歩いていたし、すぐに電車が来るから…と理由を付けて、最後まで見届けることをしなかった自分を恥じた。
もしトイレまで連れて行くことがあれば、こんなに手間を掛けさせてしまうことはなかったのだ。
ほんのちょっとのことなのに…意外とこれが難しい。申し訳ありませんでした。