3089 箱根登山vs伊豆箱根
箱根の公共交通機関は、小田急電鉄系の箱根登山鉄道・バス、西武鉄道系の伊豆箱根鉄道・バスの2陣営が争ってきた。かつて“箱根山戦争”とも言われ、その戦いは熾烈を極めた。その後、箱根自体の観光客減少という事態に、2003年箱根の振興を目的とした小田急と西武が業務提携を発表している。
当時このニュースを聞いてかなり驚いたが、結局、その後はあまり目立った成果は見られないような気がする。
箱根登山バス |
伊豆箱根バス |
実際、箱根といえば、小田急ロマンスカーで箱根湯本まで来て、そこから箱根登山鉄道に乗る…というルートを辿ると、必然的に箱根登山を利用することになるため、これまで、なかなか伊豆箱根を利用することはなかった。
今回、これまで行ったことのない箱根を見てみようということで、初めて、伊豆箱根を利用することにした。
それぞれの路線をちょっと図にしてみた。かなりの部分で重なっていることがわかる。
追記:両社で重なっている地域と、逆に重なっていない地域を明確にするため、図を一部修正した。また、2010年6月から、地下鉄の路線を示す記号のような系統番号を両社で共通化したので、以前に比べると格段にわかりやすくなった。詳しい路線図はこちら(PDF)
先日も紹介したが、箱根のフリーきっぷ(周遊券)は、箱根登山の「箱根フリーパス」に対し、伊豆箱根は「箱根スマイルクーポン」というが、その箱根スマイルクーポンは買うのにちょっと苦労している。
箱根登山バス側も、箱根フリーパス利用者に対して、誤って伊豆箱根バスに乗らないよう案内している。もちろん、伊豆箱根バス側も、同様に、箱根フリーパスが利用できない旨を案内している。
逆に、箱根スマイルクーポン利用者に対する同様の案内(誤って、箱根登山バスに乗らないように…)は、1度も見ることはなかった。それくらい、箱根フリーパスの利用が多く、箱根スマイルクーポンの利用者は少ないということなのだろう。
この時点で、箱根登山vs伊豆箱根の戦いは、箱根登山の圧勝のように見える。
箱根登山バスの注意書き |
伊豆箱根バスの注意書き |
箱根フリーパスは無効で向こう!? |
伊豆箱根バスの元箱根案内所でバスを待っていると…
「小田原に行きたいんですが…」という男性が現れた。伊豆箱根バスの社員が応対する。
「切符はお持ちですか?」
「はい、フリーパスを持ってますんで…」
「ちょっと見せてもらえます?」
「これは箱根登山バスなので、あちらに…」
案内所からちょっと歩いたところに、箱根登山バスのバス停があるため、そちらを案内していた。
思わず、伊豆箱根バスの社員に話を聞いてみる。
「お恥ずかしい話なんですが…」
…と、ちょっと話しづらそうではあったが、やはり、かなりの客が間違えるらしい。社員としてもこの状況は、ちょっと恥ずかしいと思っているようだ。
「箱根登山バスさんは、ものすごく混んでいることが多いですが、こちらは、ゆったりしていることが多いです」
空いているという部分を売りにせざるを得ないところは、たしかに恥ずかしいかも。ただ、実際に、混雑する箱根登山バスに比べて、伊豆箱根バスには、ほとんど乗客がいないという状態を何度も見た。
こうした間違いは当然ながら、バス停ではしょっちゅう起きている。
結局この人たちは乗れなかった |
間違える客があまりに多いせいか、伊豆箱根バスのチェックはかなり厳しい。箱根フリーパスであれば当然利用できないので、門前払いならぬ、ドア前払い?で、乗車を制していた。 ちなみに、僕が見たすべてのケースは、全員箱根フリーパスを持っていたために、乗ることができない客ばかりだった。
今回利用した、箱根スマイルクーポンですら、いちいち手にとって確認する運転手もいるくらい。
バスに乗ってからも、こんな自動放送が流れていた。
「小田急箱根フリーパスをご利用のお客様にご案内いたします…箱根登山バスさんとは別会社で、別途運賃を戴きますのでご注意ください。」
こうして、バス停には長蛇の列ができているところに、同じ方向に向かうガラガラのバスがやってきても、ほとんど誰も乗ることができず、そのまま出発してしまうということを繰り返す有様だ。
小涌園でも… |
宮ノ下でも… |
ただ確実に乗ってくるのは、現金やPasmo、定期券などで乗る地元の人たち。空いているので、座れるから、むしろ伊豆箱根バスを選んでているのかもしれない。
ただ、ガラガラのバスは、あまりにもったいない。
さすがに、伊豆箱根が、箱根フリーパスの傘下に加わることはできないだろうが、箱根フリーパス利用者には、わずかでも割引にするとか、箱根フリーパス利用者には、箱根スマイルクーポンを安い値段で購入できるといったような施策を考えるべきときがきているのではないだろうか?
ちょっとだけホッとしたことは、箱根登山、伊豆箱根と、会社が違っても、バスの運転手同士がすれ違いざまに必ず挨拶していたことだった。
お互いの会社の事情は全く異なるが、バス利用者を安全に運ぶという使命は同じなわけで、こうした挨拶には、会社を超えたプロ意識みたいなものを勝手に感じた。あくまで勝手にね。