作家の手紙/有栖川 有栖
作家の手紙 有栖川 有栖 角川書店 2007-03 |
最近は手紙を書かない。
(電子)メールができる場合は、たいていメールで済ませてしまうが、やはり相手やその内容によっては、手紙という形で思いを伝える必要があるだろう。
そんな、さまざまな状況を想定し、一線で活躍する作家たちが手紙を書くとどうなるか?この本は、そんな手紙が36編収録されている。
たとえば…
- 「人間でないことがばれて出て行く女の置き手紙」、
- 「真偽は定かではないが、巨人軍監督就任を打診されているという噂の原辰徳氏への手紙」
- 「相手の妻が読むことを想定して、同窓会で再会した初恋の男からの誘いを断る手紙」
- 「中元に近江牛の味噌漬けを届けてくれる、亡父の友人に、それが毎年、腐っているのだと思い切って教える手紙」
中には、実在する人物への手紙と、完全な架空の手紙が入り交じっていて、手紙を一編読むごとに頭の中を整理しないと混乱しそうになる。
手紙は、基本的に1対1のものだから、第三者が見るとその関係を類推しながら読んでいくことになる。そういった点で、読むのはちょっとまどろっこしいかなと思ったが、やはりプロの作家…読む人にさりげなく登場人物の素性を明らかにしていくし、わずかな文章なのに涙腺がゆるみそうになったり、びっくりするようなどんでん返しが含まれていたり…と、ショートショートを読むような楽しさもある。