3013 森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン)

建築・都市

最初に僕が北欧の興味を持ったのは、いまから4年前の2006年4月。

松下電工ミュージアム(当時)で行われていた「建築家グンナール・アスプルンド - 癒しのランドスケープ -」展を見学したのがきっかけだった。ここで紹介されていたのが、一昨日に見学した、ストックホルム市立図書館と、ここ森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン)だった。

最初、別のお墓に行ってしまって、駅から徒歩2~3分のところにあるにもかかわらず、たどり着くのに相当時間が掛かってしまった。地下鉄に並行してお墓が見えたので、ついここだと思い込んでしまったのだ。実際には、駅の改札に面した通りを右に曲がり、ほんのちょっと歩いた先が入口だ。

世界文化遺産であることを示す印が掲げられていた。誤って行ってしまったお墓で、これがないことに、すぐに気付くべきだった…_| ̄|○

入口からすでに、遠くに象徴的な十字架がちらっと見えていた。

ようやくやってきた。グンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェレンツの共同設計による、森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン)へ。

十字架のたもとに、森の火葬場と礼拝堂が配置されている。

昨日まであんなにいい天気だったのに、今日はどんよりとした曇り空。しかも肌寒い。

目を真っ赤に腫らせた女性2、3人と寄り添うように歩いていく人たちとすれ違った。

少し座っていたら清掃していたおじさんがおもむろに近づいて、日本語の解説パンフレットを渡してくれた。親切さにありがたかったのと同時に、よくすぐに日本人だということがわかったなぁ…と思った。ここは日本人観光客が多いのかな?

十字架をあとに、森の墓地を歩いてみる。

お墓は森の木々とともに並んでいた。日本でよく見るお墓とまったく違っているお墓に、ふと「自然に還る」という言葉を思い浮かべた。

手向けられる花が切り花でなく、植えられているので、場所によっては花畑のような感じで、お墓にいるのに安らぐ落ち着いた印象を受けた。

アスプルンドが設計した、「森の礼拝堂」にやってきた。

三角の屋根が特徴的。

外から中の様子をうかがっていると、係の人が「中を見ていっていいですよ」という感じで、招き入れてくれた。

準備中なのか、礼拝が執り行われた後なのか、それぞれの椅子の上には聖書が置かれ、花束なども見えた。

礼拝堂の中は、照明を使っていないがとても明るい。天井の明かり取りの窓のおかげだ。

入口の門に使われていたドクロには、ちょっとギョッとした。

ビジターセンターにやってきた。1928年に作られた墓地管理職員用施設だったそうだが、1998年にビジターセンターとして利用されるようになったそうだ。

午前11時からオープンするのだが、まだその15分ほど前だったので、あたりはひっそりしていた。

ビジターセンター前の案内図の横に、さきほどおじさんからもらったパンフレットが入っていた。ちなみに、同じような箱が森の墓地の入口にも置いてあったが、こちらは空っぽだった。このパンフレットはインターネットからでもダウンロード(PDF形式)できるみたい。

先に別のところを歩いて、ちょうど11時になったころを見計らって、ふたたびビジターセンターにやってきた。

気のぬくもりを感じさせるような内装で、カフェや休憩所、お土産コーナー、何が書いてあるのかわからないけど、解説のコーナーなど充実。ありがたいのはトイレがあること。今回の旅行ではとにかくトイレの確保が大変だった。


「復活の礼拝堂」は、シーグルド・レヴェレンツによって設計されている。同時期に設計されたという、アスプルンドの「森の礼拝堂」と違った思想が感じられる。

「七井戸の小径」と呼ばれる歩道の両脇にはお墓が並んでいる。ひとりの男性が、両手にじょうろを持って花に水をやっていた。こういう光景を見ると、ふと、いまいる場所が“お墓”であるという感じがしなくなってくる。

小径は「楡(にれ)の高台」と呼ばれるところまで続いていた。もらったパンフレットによれば、888mあるそうだ。

高台に上がると、森の火葬場と礼拝堂がよく見える。

アスプルンドのお墓が十字架のすぐ脇にある…と聞いていたので、本当に真横にあるのかと思って探してしまった。実際には、歩道と壁を間に挟んだところにひっそりと眠っていた。

もちろん、お墓の前には、花が咲いていた。

Posted by ろん