ぐるり一周34.5キロ JR山手線の謎/松本 典久
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ぐるり一周34.5キロ JR山手線の謎 (じっぴコンパクト新書) 松本 典久 実業之日本社 2009-08-07 |
去年、山手線命名100周年ということで、命名されたころの山手線の色を復刻したというチョコレート色の電車が走っていたことは、まだ記憶に新しい。
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さまざまなイベントも催されたが、今回読んだこの本も、昨年(2009年)7月に発売されているから、それに触発された?出版だったのかもしれない。
山手線にまつわる、さまざまなネタを集めた本だ。
もともと山手線は環状運転していなかったとか、運転されている車両の変遷、山手線の各駅の表情など、鉄道にそれなりに長けた人にとっては、物足りなさを感じるかもしれないが、山手線にたった一カ所だけ残された踏切とか、車体側面の広告の貸し切り費用が1日あたり20万円といった話は、鉄道ファンならずとも、興味を持ってくれるかもしれない。
ただ、とても残念なことがある。
興味深い記事が多い中で、山手線の駅がいまの場所に設置された経緯を“鉄道忌避伝説”に基づいて解説していたところが少なくなかったということだ。
鉄道忌避伝説とは、新たな鉄道敷設にあたって、沿線となる住民たちが反対したために、鉄道のルートが変えられてしまったという“伝説”のことだ。
“伝説”としたのは、まことしやかに言われているこうした話の多くが、裏付けがないということが、徐々にはっきりしてきたからだ。
実際は、住民たちの反対ではなく、鉄道を敷設する側の意向によるものと言われている。すでに市街地になっている場所をあえて避けることで、用地買収の手間と費用を減らし、鉄道が運転しやすい直線的なルートを選んだからに過ぎないというのが、最近の定説になりつつある。
それだけに、もしこの本で述べられていることの真偽が気になって仕方がなかった。