まやかしだらけのプライベートブランド/加藤 鉱

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4062153572 まやかしだらけのプライベートブランド
加藤 鉱
講談社 2009-03-31
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セブンプレミアム、くらしモア、バリューライン…僕の身近で見かけるプライベートブランド(PB)の名称だ。生協の商品なども、特別ブランド名をつけてないが、PBそのものだ。

あらゆる商品が、いま低価格志向となっていることに異論はないだろう。
そうした志向に小売店が出したひとつの答えが、プライベートブランド(PB)だ。何度かブームになったそうだが、いま、またブームになっているらしい。

そして、その低価格志向に対応するため、小売店からの答えが、PBということになる。そのPBは、どれも同じではなく、その差は商品につけられているラベルに垣間見ることができる。

タイプA
製造者としてメーカー名のみ表示
タイプB
販売者としてメーカー名のみ表示
タイプC
販売者としてメーカー名を表示、加えて製造者を製造所固有記号で表示
タイプD
販売者としてスーパー名のみ表示

これらは、まさに本書で訴えようとしている、“まやかしだらけ”のPBを象徴するものなのだそうだ。たしかにこれでは、どこに責任があるのだかよくわからない。

ふだんPBとして見ている商品には、ダブルチョップと呼ばれる商品も混じっているという。ダブルチョップとは、メーカーと小売業者が、共同して構築する“共同開発ブランド”のことだ。つまり、タイプDを除けば、みんなダブルチョップとなる。

PBは、はじめに消費者ニーズありきで販売者である小売業が消費者ニーズを汲み取って開発されたものだ。先述のダブルチョップは、まずメーカーの都合ありきで、生産設備を有効に活用して効率を上げたいとか、売り上げを安定的に得たいという思惑が見え隠れする。

こういったダブルチョップは、本来のPBとは異なるというのが、本書での意見だ。

PBと名乗るからには、企画設計から消費者に届くまでのすべてに販売者が関わり責任を持って構築するのが大原則となる。だから、きちんとしたPBであれば、中国産冷凍餃子事件は起きなかったし、万が一起きたとしても、その後のドタバタのようなことは決して起きなかったはずだ…と。

そんなこうした本来あるべきPBとして、イオンのトップバリュを取り上げている。

前記の、冷凍餃子の場合、生協がPBとして製造者た天洋食品に対する商品仕様書が8枚だったそうだが、トップバリュでは、なんと120枚以上もあったそうだ。その事実を知るだけでも、本来のPBとはどういったものであるか、トップバリュのすごさを見ることができる。

決して内容は悪くないし、こうしたプライベートブランドの問題に正面から取り組んだ本は初めて見たのだけれど、全編通じてトップバリュのことが書かれているのに、タイトルを見ただけでは、プライベートブランドそのものに問題があるような印象を受けてしまう。本書のタイトルが刺激的すぎるのだ、ひととおり読んでみた上で、もしタイトルをつけるとしたら、

「トップバリュのあくなき挑戦」

といった感じかな。それじゃ注目もされにくいかな?

実は、僕の身近にイオンやジャスコがないので、トップバリュはまったく縁がない。買った記憶もない。今度、機会があったら手に取ってみたい。