日航機墜落/河村 一男

■航空,龍的図書館

4872574486 日航機墜落
河村 一男

イースト・プレス 2004-07-13
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当時墜落した現場となった群馬県警察本部長そして日航機事故対策本部長を務めた著者が、当時の状況を克明に振り返っている。

まさに事件の最前線における当事者が書いたものだから、現場の混乱も含めてリアルな状況がかいま見える。六章あるうちの四章までが、現場を特定するための経過をたどる話が占めるほど、初期の混乱がいかに大変だったかということがわかる。

まず現場の特定がなかなかできなかったという問題。

たくさん寄せられる目撃情報は振り返ってみればどれも事故機ではなく、捜索中のヘリコプターであったり、噂が噂を呼んだ一人歩きした情報だったり、裏付けも取らずに報道された内容をそのまま確認もせずに別の会見で発表されたり…その結果、現場発見までにかなりの時間を要することとなった。

実際には現場はかなり急峻な山奥だったので、発見できたとしても救助までできるかどうかとは別の問題があるが。

現場発見後も混乱し続け、そして当時墜落現場として呼ばれていた”御巣鷹山”が一人歩きしてしまった。つまり「御巣鷹山は墜落現場ではない」というのだ。

そもそもこのあたりには具体的な地名がなく事故現場と御巣鷹山は2.5kmも離れており、かつて、誤って登った人もいてその違いを指摘されたこともあるという。

その初期の混乱が、現在まで影響していると言えなくもない。

全体的な論調としては、この事故に関するさまざまな憶測や意見に対して「警察としての反論しておきたい!」という思いが随所に見られる。

この本だけ見れば「日本の警察はさすがだ」と言いたくなるが、警察の不祥事が相次ぐ中、逆にあまりにすばらしすぎる感じもして、本書の中で批判されていた本も読んでみたくなった。

(2005/2/1) 【★★★☆☆】 -05/2/20更新