2530 安藤忠雄建築展

建築・都市

数多くいる建築家のなかで、安藤忠雄の人気は非常に高い。
関西出身のせいかこれまであまり東京での活躍は少ないような気がしたが、表参道ヒルズ、東急渋谷駅、着工したばかりの東京スカイツリーなど、最近は東京での活躍が目立ってきたような気がする。

ギャラリー間
展示の写真撮影も認めてくれればいいのに

建築に興味を持ってから、すぐに彼の名前と、事実上の“出世作”となった「住吉の長屋」のことは知っていた。「住吉の長屋」は、コンクリート打ちっ放しのわずか15坪にも満たないほど極小住宅で、わずかな敷地しかないのに、なんと1/3が中庭で、中庭を挟んで反対側の部屋に行くには、中庭を横切るため、雨の日は傘を差さないと行けない…という、なんとも突拍子もない住宅だが、コンクリート打ちっ放しの先駆け的存在で、30年以上前に作られたのに、いまだに強烈なインパクトがある。

その「住吉の長屋」の実物大模型が展示されているいうことで、乃木坂にある“ギャラリー間”で開催されている「安藤忠雄 建築展(キャッシュ)に行ってきた。

ビックリしたのは、その来訪者の数だ。ここギャラリー間は、建築に関心のある人たちには知られてはいるものの、どちらかと言えば、“知る人ぞ知る企業ギャラリー”といった感じだが、今日はこれまて見たことのないようなくらいの大勢の人たちでいっぱいだった。

もともとある屋上をうまく利用した原寸大の作品がそこあった。2階への階段は本格的なコンクリート製で昔からそこにあったような感じで、展示に掛ける“気合い”を実感。

ほかにも、安藤忠雄が手がけてきた作品や、アブダビやバーレーンの博物館といった現在進行中のプロジェクトを、写真や模型などで紹介している。

ものすごく楽しみにしていた反動だろうか…原寸大の模型そのものには感動したが、それ以外は正直言って拍子抜けしてしまった気がしてならなかった。理由はよくわからない。

単に僕の理解が悪いのか、それても彼の発想がその場で何か解を得られるほど簡単なものではない…のかもしれない。「住吉の長屋」において、住む人に不便な生活を強いた提案は、建築家の横暴と批判されたことに対する、安藤忠雄の答えがとても印象的だった。

だが、住まいの何を喜びとするかは、そこで過ごす人間の価値観の問題である。大阪下町の猥雑な都市環境を前に生活とは何か、住まいとは何かを徹底的に考えた末、私は、自然と共にある生活にこそ人間生活の原点があるという結論に行き着いた。スペース、コストともに極限に近い条件下での都市住宅――だからこそ安易な便利さより、天を仰いで“風”を感じられる住まいであることを優先した。

Posted by ろん