バッテリー/あさの あつこ
バッテリー あさの あつこ 角川書店 2003-12 |
この主人公である原田巧は天才的なピッチャー。その才能は、同級生はもちろん周囲の大人も含めて、誰もが一目置く。主人公の凄まじいまでの自信や、激しすぎる性格を見ていると、これが小学校を卒業したばかりの少年かよ…というツッコミを入れたくなってしまった。あまりに現実離れしてはいないか?…と。
けれど、著者の故意によって、このようなキャラクターが誕生したのだということを、本文を読み終わたあとに読んだ「あとがきにかえて」で知った。
大人たちから押しつけられた、強調を尊び、個よりも集団を重視する“定型”から抜け出すことができないまま生きてきたという著者から創造されたのが、主人公なのだ。
自分を信じ、結果のすべてを引き受ける。そういう生き方しかできない少年をこの手で書ききってみたかった。
著者ができなかった理想がここにある。だから、現実にいるかどうかなんて関係ない。関係ないけれど、そんな主人公が、多くの仲間たちの中で成長していく過程で、どのように変化していくのか、これがこの物語の読みどころなのかもしれない。
この本が、あえて児童書として書かれたというのもそういう背景もあったからなのだろう。
文庫本として全5巻ある。今回も例によって? ふーさんから借りたのだが、彼女は1巻しか買っていないのだ。さぁ、2巻目以降どうしようかなぁ…