東洋一の本/藤井 青銅
東洋一の本 藤井 青銅 小学館 2005-04 |
「東洋一」という言葉。
そういえば、いろいろなところで聞いたことがあるが、考えてみれば、かなり曖昧な表現だ。日本一や世界一であれば、日本の中で、または世界の中で一番であればいいけど、そもそも東洋ってなんだ?…ってことになる。
そんな軽い疑問から始まった著者の“東洋一探し”の旅は、意外な方向へと進んでいく。
東洋一と名乗っている東洋一物件リスト、東洋一という言葉が登場する新聞の見出し一覧など調査は徹底している。
実は、東洋一という言葉を考えるということは、そのまま日本人の世界観を考えていくのに等しいのだ。そもそも東洋一という言葉自体、日本でしか使われていないという。西洋はもちろん、中国に対する、ある種のコンプレックスから生まれたという仮説は、非常に興味深い。
いっこく堂をプロデュースした放送作家である著者の、軽妙で独特な文章は、とても読みやすく、読み応えがある。歴史を振り返る切り口は、こんなところにもあったのだと目から鱗が落ちる思いがした。