1580 刑法39条
刑法39条と聞いて、すぐにその内容を言える人は、
相当この分野に関心の高い人と言えるかもしれない。いま読んでいる「そして殺人者は野に放たれる」(日垣隆著)は、
この刑法39条による不条理を徹底的に糾弾するノンフィクションだ。
次の二つの犯罪では。どちらが重い刑罰が処せられるでしょう?
- 一方的な恨みを持った相手に、待ち伏せした上で、瀕死の重傷を負わせたケース
- 一方的な恨みを持った相手に、酒を飲んだ上で、殺してしまったケース
まぁここでこんな問いを持ち出すということは「えっ」と思うような答えになるのは、おなじみなので、すぐにわかると思うが、
1の方が重い。2の場合は、場合によっては「無罪」にもなってしまうのが、刑法39条のすごいところである。さらにすごいのは、
酒ではなく覚醒剤であっても、同様の扱いになるというのだから驚く。
ここで改めて刑法39条を見てみる。
(心神喪失及び心神耗弱)
第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
この条文の通り、心神喪失者や心神耗弱者と認定されたらは、どんな犯罪を犯したとしても、
無罪放免か刑が軽減されるとはっきり明記されているのだ。その結果が、先に挙げた例のようなケースとなる。
わずか3行でしかないこの法律によって、相当不可解な判断がなされているのだ。これはいったい誰のための法律なのだろう。
いまの日本では、どんな殺人を犯しても、許されてしまうケースが2つあるように思う。ひとつが犯行が少年によって行われた場合。
そしてもうひとつがこの心神喪失によって引き起こされた場合だ。前者は最近、凶悪な少年犯罪が目立っていることもあって、
見直しの議論とともに注目を集めているが、後者については、どうも話題になりにくい気がする。
それは人権問題とのからみだという意味もあろうが、犯罪被害者が最もひどい人権被害を受けているのに、それを置き去りにしてしまう考えはいかなる理由によるものなのか?
精神が異常になることが明らかな薬物を自ら使用して犯した犯罪であっても、刑を減軽するのがこの法律なのだ。心神喪失であれば何の罪にも問われず、ほぼ無条件と言ってもいいくらいに利用されてきた事実。その結果、何事もなかったように社会に舞い戻ってくる凶悪犯が確実に存在するのだ。
もっと真剣に考えられていい問題だと思う。