その怪文書を読みましたか/梨・株式会社闇

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その怪文書を読みましたか
梨・株式会社闇
太田出版 (2023/12/12)

本書で取り上げている“怪文書”の定義がちょっと違ってた。

いろいろ検索して、あらためて「怪文書」を定義してみると「事実上匿名で発行された真偽意味不明な主張をしている文書のこと」のようだ。

本書の巻末にあったコラムでは、怪文書が書かれる動機を大別すると以下のようになるとしている。

  1. 仲間を増やすための政治的戦略
  2. 告発や警告のための正義感・善意
  3. 陥ってる苦境を訴えるSOS
  4. 思想を広めたいという自己開示欲求
  5. その他、そもそも意図が不明なもの

そして、このうち、本書で取り上げているのは②〜⑤だそうで、①は取り上げていないということだった。

しばらく読んで、なんとなくしっくりこないと思ってしまったのは、自分の考える怪文書のイメージは、むしろ①のことだったからだ。

怪文書のイメージのひとつ
怪文書のイメージのひとつ

たとえば、2021年10月に見かけたこの貼り紙は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による国の経済対策に対する批判と、どこか妬みのようなものも感じられて、いろいろ考えさせられる。

本書では、実際に存在したさまざまな怪文書を写真で紹介している。

そのほとんどすべてが理解不能だ。

自分のなかでの感覚としては、“怪文書”というより“理解不能な文書”と思えてしまう。

当然ながら、合理的に説明がつかないことばかりだ。

正解なんてないし、書いた当人ですらわからないかもしれない。

想像を超えた記述に驚きはするが、遠い世界のできごとのような気がして、あまり頭に入ってこなかった。

先述の巻末のコラムでも言及があるが、この文書に書かれていることは妄想に過ぎず、ほとんどの場合、心身機能の失調ということで異様さには説明がつく。

それを分かったうえで、怪文書について掘り下げていっているわけだが、どこまでいっても理解は不能だよなぁ…と思う。

全体を通して感じたのは、ここで取り上げている怪文書のほとんどは、どういうわけだか、おどろおどろしくなってしまう共通点がある。

逆に言えば、おどろおどろしいから怪文書なのかもしれない。

さらに言えば、世の中には、怪文書を怪文書として感じない怪文書がいっぱいあるんじゃないか…と思うと、怖くなってくる。

考え過ぎか。

Posted by ろん