カラフル/森 絵都

■文学・評論,龍的図書館

4167741016 カラフル (文春文庫 も 20-1)
森 絵都

文藝春秋 2007-09-04
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他人からの相談事には、何らかの答えを出せることが多いが、自分のことになると、とたんに難しくなってしまうのはなぜだろうか? それはおそらくは、どれだけ客観的になれるかどうかなのかもしれない。

生前犯してしまった罪のために、生まれ変わる輪廻のサイクルから外されてしまった主人公が、どういうわけか抽選で再挑戦の権利を得たというお話。その再挑戦のためには、ある一定期間、下界の他人のだれかの体を借りて過ごす(これを天使業界ではホームステイというらしい)。その間に、犯した罪を思い出すことができれば、ふたたび輪廻のサイクルに戻れるのだという。

もし本当に、見ず知らずの人の体にホームステイすることになったとしたら、そりゃ大変なことだろう。そもそも、見ず知らずの人になりきること自体も大変だが、あくまでも客観的でいられるからこそ、見えてくることもある。

見えなくてもいいことが見えてきたり、黒だと思っていたことが白だったり、たった一色だと思っていた色がよく見ると、さまざまな色を秘めていたり・・・。いろいろと気づかせられることの多い話だった。読んでいるうちに、少しずつ気分が軽くなる気がした。お薦めの一冊。

相手のことを大切に考えるのであれば、相手の立場に立って当事者に近い立場でいるよりも、むしろ相手から離れて第三者的立場で考える方が、より適切な答えが見いだせるのではないかと思う。でも、相談する側にとっては、答えを出してもらうことも大事だが、できるだけ身近な存在でいてほしいという思いもあるだろうから、一概にはどちらがいいとも言えないかもしれないけど。