人はなぜ恐怖するのか?/五味 弘文

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4840127999 人はなぜ恐怖するのか?(ナレッジエンタ読本19)
メディアファクトリー 2009-06-03

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実は、お化け屋敷はあまり好きな方じゃない。そもそもホラー映画やその類が嫌いなので、おのずと、お化け屋敷も避けてしまう。

世の中には、こうしたお化け屋敷が好きな人は少なくない。なかでも、後楽園ゆうえんち(東京ドームシティアトラクションズ)で、毎年恒例となっている期間限定企画のお化け屋敷は、以前からとても人気があることは知っているが、行ったことはない。

そのお化け屋敷作りに関わってきた“お化け屋敷プロデューサー”による、お化け屋敷の秘密に迫るのがこの本。

もちろん、お化け屋敷作りを教えてくれるところなどあるわけもなく、著者は試行錯誤を繰り返しながら、お化け屋敷とはどうあるべきか?をつねに考え続けてきたという。そのために「恐怖とはどういうものか?」を追求することとなった。本書では、追求の結果得られたさまざまなノウハウが紹介されている。

たとえば、「入口と出口はあえて並べる」とか、「途中退場口を設けてあるのは、(実は途中退場をしてもらう目的だけでなく)、迷いを生ませ恐怖を増幅させる目的」もあるのだそうだ。

「自分でコントロールできない状況こそ恐怖」という。たとえば、幽霊が怖いのは、それを自分がコントロールができないからだ。確かにそうだ。幽霊に遭遇したら、どう対処していいかわからない。恐怖だ。

しかしお化け屋敷は違う。どんなに恐怖や緊張があっても、いずれ必ず緩和される。その緩和がお化け屋敷の快楽なのだという。

だから「怖かった」よりも先に「楽しかった」と感想をもらうのがいいお化け屋敷であるという著者の思いは作る側の本音だろう。

「こんなつまらない仕掛けに怖がった自分が恥ずかしい」と思わせてはいけない。

上質なフィクションでお客様の心を満たそうという考えは、さすがプロと思った。