一発屋芸人列伝/山田ルイ53世
子供の頃はもちろん、社会人になってからも、しばらくはテレビをつけない時間の方が短いくらいずっとテレビをつけてたし、よく観ていたが、いまは録画でドラマなどを観るだけで、ほとんど観なくなってしまった。
それだけ芸人を知るきっかけは減る一方なのだけど、それでも、”一発屋”ともなると、社会現象ともいえる状態となって、ニュースなどでも取り上げられることもあるから、無意識のうちにその存在を知ることになる。
本書は、一発屋を自認する著者が、実際に一発屋である彼らを取材し、彼らが芸人を志し、ギャグが“発明”された経緯や当時の様子、そして転げ落ちるように”過去の人”となっていく姿など、興味深い裏話を交え、余すところなく紹介する。
登場する一発屋は…。
レイザーラモンHG、コウメ太夫、テツ and トモ、ジョイマン、ムーディ勝山と天津・木村、波田陽区、ハローケイスケ、とにかく明るい安村、
キンタロー。、髭男爵
一発屋なのかな?という芸人も含まれているが、この際、どちらでもよい。
とても冷静に彼らを見つめる著者独特の表現が面白いせいか、そんな”些細な”ことを忘れてしまう。
「セルフサービスで磔になるイエスキリスト」(p.159)のような表現には笑わされてしまった。
たしかに、偶然の積み重ねということもあるかもしれないが、たとえ一発屋でも、日本中をネタで席巻するというのは、とんでもなくすごいことだ。
彼らのインタビューの感じからは、成し遂げたとか、やり遂げたという感じはまるでない。
インタビューの際に撮影されたと思われる彼らの表情は、ほとんど、オーラらしいものが感じられない。
たぶん、街中をすれ違っても、まったく気付かないと思う。
皆、いい人たちである。そして、共通しているのは、みんな“不器用”というところだろうか。
それが彼らの最大の魅力なのかもしれない…なんて思った。