世界の廃墟/佐藤 健寿
廃墟というものには、どうしても物悲しさが伴う。
廃墟になったということは、その建物や施設が使われなくなったのはもちろん、取り壊すことすらできないという状態を意味するからだ。
廃墟が、どういった思いで建てられ、そして何が原因で廃墟に至ったのか…背景はさまざまで、一言では言い表せない重い理由であることが多い。
僕もそうだけど、こうした愛好家は世界中にいるようで、世界中から観光客が集まってくる廃墟というものもあるらしい。
本書は、そんな世界中の廃墟を集めた写真集だ。
日本からは端島(軍艦島)と大久野島(うさぎ島)が登場する。
世界の廃墟はスケールが大きい。
例えば、セントラリアという街は、炭鉱採掘で栄えたが、炭鉱の地下火災が原因で廃墟となったという。
火災により地下水が蒸発。地熱がなんと60度から70度に上昇し、さらに有毒ガスも発生したというのだから、すごい話だ。
ベルギーのジーゲル駅は、シールド工法で作られたと思われる立派なトンネルだが、ずさんな都市計画によって使われることなく放置されているとか…。
ほかにも、本書の表示でも採用された、ブルガリア共産党ホールや、ドイツにあるベーリッツ・サナトリウムという病院など、実際に見てみたい!と思う廃墟が、簡単な背景と一緒に大判の美しい写真で紹介されていて、興味は尽きない。