『試し書き」から見えた世界/寺井広樹
”自分探しの旅”に出掛けていた著者が、ベルギー滞在中に、ある”試し書き”を見つけた…。
このベルギーで見つけた試し書きに魅了され、以降、世界中の試し書きを集めるようになったという。
試し書きとは、文房具店や文具コーナーなどにある、あの、ペンの試し書きのことだ。
本書では、 コレまでに集めた、106カ国、2万枚の試し書きのなかから、厳選した”作品”を紹介する。
試し書きなんて、当たり前にありすぎて、これまで気にしたこともなかった。
しかし、これを集め、体系立てて俯瞰することで、試し書きを単体で見ただけではわからなかった、新しい見方を、私たちに紹介してくれる。
試し書きは、自分の文字や絵が、自分以外にさらされるにも関わらず、他者を意識しないという特徴がある。
そういった意味で、誰かに見られることを意識した、落書きとも寄せ書きとも違う。
だからこそ、興味深い、”アート作品”ともなり得るのかもしれない。
ちょっと強引な感じがする気もしたけど、たしかに、お国柄も見えてきて興味深い。
とても面白かったが、本の体裁の制約からか、本文には一切写真などは載っておらず、すべて冒頭の口絵にまとめられている。
だから、いちいち口絵を見るためにページをめくらなければならないというのは、ちょっと面倒だった。
また、著者の、”ポジティブ感”がちょっと強く、読後感が食傷気味になってしまったが、こうした、他の誰もやっていないことを見つけ、それの第一人者となって生きていけることについては、ちょっと羨ましくもあった。