『試し書き」から見えた世界/寺井広樹

■芸術・デザイン,龍的図書館

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『試し書き」から見えた世界
寺井広樹
ごま書房新社 2015-09-29

by G-Tools , 2015/12/16

 

”自分探しの旅”に出掛けていた著者が、ベルギー滞在中に、ある”試し書き”を見つけた…。

このベルギーで見つけた試し書きに魅了され、以降、世界中の試し書きを集めるようになったという。

試し書きとは、文房具店や文具コーナーなどにある、あの、ペンの試し書きのことだ。

本書では、 コレまでに集めた、106カ国、2万枚の試し書きのなかから、厳選した”作品”を紹介する。

試し書きなんて、当たり前にありすぎて、これまで気にしたこともなかった。

しかし、これを集め、体系立てて俯瞰することで、試し書きを単体で見ただけではわからなかった、新しい見方を、私たちに紹介してくれる。

試し書きは、自分の文字や絵が、自分以外にさらされるにも関わらず、他者を意識しないという特徴がある。

そういった意味で、誰かに見られることを意識した、落書きとも寄せ書きとも違う。

だからこそ、興味深い、”アート作品”ともなり得るのかもしれない。

ちょっと強引な感じがする気もしたけど、たしかに、お国柄も見えてきて興味深い。

とても面白かったが、本の体裁の制約からか、本文には一切写真などは載っておらず、すべて冒頭の口絵にまとめられている。

だから、いちいち口絵を見るためにページをめくらなければならないというのは、ちょっと面倒だった。

また、著者の、”ポジティブ感”がちょっと強く、読後感が食傷気味になってしまったが、こうした、他の誰もやっていないことを見つけ、それの第一人者となって生きていけることについては、ちょっと羨ましくもあった。

Posted by ろん