4520 原案公表で感じた疑問
2020年東京オリンピックのエンブレムが、ベルギーのリ劇場のロゴと似ているという問題は、沈静化する見通しをまったく感じない。
こうした状況を受け、大会組織委員会が、最終案は原案から2度の修正を経て制作されており、そもそも「原案は劇場のロゴとは別ものであることを強調する会見を行った。
たしかに、原案は”T”が強調されていて、劇場のロゴとは異なっている。
原案のエンブレムは、単純な三角と四角の組み合わせだった。
その後の修正案では、全体の「円」が強調されていたため「躍動感がない」と再度修正を求め、さらに、商標申請や登録に似ているものがないと判断し、現在のデザインが決定されたそうだ。
こういった経緯を聞くと、かえって、いろいろ疑問が出てくる。
なぜ、これを最初に出さなかったのだろう?
もし、原案から修正されたものだということがハッキリすれば、デザインの良し悪しは別として、ここまでの騒動にはならなかった可能性はある。
そして、次の疑問。
今月5日に行われた会見では、佐野氏は「エンブレムはA~Zまでのアルファベットが存在するように展開できるとも説明した。
このとき紹介されたアルファベットを見るとわかるが、これらは原案で使われている単純な三角ではなく、一辺が弧を描く修正後のデザインが用いられている。
時系列で考えると、これらのアルファベットは、原案から修正されてから作られた…ということになる。
これ自体は問題ないが、もし、最初から彼のオリジナルな発想によるものだったら、単純な三角を用いたアルファベットの一覧がなければ不自然だ。
やはり、これもなぜ最初から説明しなかったのだろう?
そして、原案が修正される過程で出た「躍動感がない」という言葉で疑問が…。
そもそも、僕には彼の原案に、少しも躍動感を感じることができなかった。
そんなデザインに、躍動感という新たな要素を持ち込んだらどういうことになるか?
それは模倣以前に、彼のデザインからは離れていくことを意味しないだろうか?
だったら、最初から躍動感のあるデザインを作れる人にお願いすればいいだけのことではないか?
今回感じた最大の疑問。
そこまでして、彼にデザインを作らせる意味はなんだろか?…ということ。
なんとしてでも彼を制作者にしたいという力が働いているように見えてくる。
いずれにしても、こんな原案を見せないと信用してもらえない時点で、もうこのエンブレムの価値は失われているとすら思えてくる。