日本の珍地名/竹内 正浩

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日本の珍地名 (文春新書) 日本の珍地名 (文春新書)
竹内 正浩

文藝春秋 2009-08
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いわゆる平成の大合併は、2010年3月末で事実上終了したが、開始当初1999年に3232あった市町村が、終了時には1728と半減してしまった。

自治体サービスの効率化、ひいては財政再建、合併にともなう財政支援などが、日本中の自治体を合併に突き動かしたが、はたして、本当に合併を進める必要があったのかどうかは、はなはだ疑問と著者はいう。

その問題の一端が、地名にあらわれている。

歴史的経緯があって呼ばれてきた地名が、合併によって次々と消滅してしまったことに対して、誰が責任を負うのだろうか?

合併すること自体が優先され、地名を守るということに誰も責任を負う必要がないから、結局ないがしろにされてしまったのだろう。

1970年、当時の自治省事務次官通知で、「新たに市となる普通地方公共団体の名称については、既存の市の名称と同一となり、又は類似することとならないよう十分配慮すること」とされているそうだ。

このために、茨城県鹿島町が、佐賀県鹿島市のクレームによって、鹿嶋市とせざるを得なかったし、沖縄県の宮古島周辺の自治体が合併して沖縄県宮古市としたかったが、やはり岩手県宮古市からの要請で、沖縄県宮古島市とせざるを得なかった。

人工的な名前ならいざ知らず、以前からそう呼ばれていた地域を指し示す地名が禁止されてしまうのは、いかがなものだろうか?

こうした通知ひとつで、地名が思うように決められないのは、やっぱりおかしい。

また、一方で、新地名が住民に受け入れられずに合併自体が破綻したケースは枚挙にいとまがないわけで、地名が軽んじらているわけではないようだが、珍地名が増えてしまった状況を見ると、地名の扱いは当事者と、僕らのような部外者とは違っているのは仕方がないのか?

本書では、「地名相似形」「所在地不明地名」「リミックス地名」「まぼろし地名」「ブランド地名争奪」「小手先変更地名」「難読・誤読地名」の7つで、番付を付け、それぞれについて、背景や決定までの経緯など、詳しく解説をしている。

いずれは慣れる?のかもしれないが、

「秋田県大仙市」
「岩手県奥州市」
「山梨県甲州市、甲斐市、中央市」
「静岡県伊豆市、伊豆の国市」

…なんていわれても、いったいどこにあるのやら覚えるのに苦労しそう。大曲とか水沢、江刺、伊豆長岡とか、由緒ある地名でよかったのではないかと、どうしても思ってしまう。

ちょっと身近な例で、ふじみ野市は、地名の由来となった東武東上線ふじみ野駅が、まるごと隣の富士見市にあるというややこしさは、地域住民の皆さんは気にならなかったのだろうか?