漂着物考―浜辺のミュージアム/住友和子編集室 村松寿満子

■芸術・デザイン,龍的図書館

4872758250 漂着物考―浜辺のミュージアム (INAX BOOKLET)
住友和子編集室 村松寿満子

INAX出版 2003-09-15
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ふだん海との接点はほとんどない。そのせいか海を前にすると、軽い高揚に似た気分になることがある。

なで回したくなる、つるつるした石

見慣れない状況に身を置いているということもそうだし、海岸では、いろいろなものを発見できる楽しみがあるということもあると思う。道端で落ちているものといったら拾うに値しないような“ゴミ”ばかりだけれど、一方、海で発見できるのは、圧倒的にゴミだらけ…といった海岸もあるけれど、ときどき「ん?」と気になってしまうものも結構ある。実際、自宅には、屋久島の海で拾った見事に磨かれた丸い石がある。

見た目にあまりきれいでなく、人によっては見向きもされないようなものでも、人によっては宝物にしたくなるような場合もあるようだ。

本書は漂着物学会の全面的な協力によって、海岸に打ち上げられるさまざまなもの…果実・種子、クジラ、貝・魚、流木、メッセージボトル、ガラスびん、水筒・缶、浮き、難破船、電球、玩具、使い捨てライター、発泡スチロール・プラスチック片…といったものたちを取り上げ、掘り下げていく。ちょっと視点を変えただけで、ただのゴミなのか、貴重な資料なのか、見方が変わってくる過程が面白い。

本文とは直接関係ないけど、2008年春の伊豆の海

この本のサブタイトルにあるように、まさに、漂着物は「博物館」とも言える。ただ実際の博物館と大きく違うのは、展示されている(=落ちている)資料(=ゴミ)には、解説など一切ないということだ。資料をどう見るかは、あくまで見る者の知識と、想像力に任される。

こうした漂着物には、外国から海流に乗ってやってきたものものもあれば、同じ日本国内のものであっても、陶器の欠片のような200~300年も前のものもあるのだという。

さまざまな漂着物からは、遠い外国だけではなく、過去にも思いを馳せることができるなんて、ちょっとワクワクしてくる。

海とは縁がほとんどないが、今度行ったときには、漂着物の見方がちょっと変わってきそうだ。