バキュームカーはえらかった/村野 まさよし
バキュームカーはえらかった!―黄金機械化部隊の戦後史 村野 まさよし 文藝春秋 1996-05 |
し尿処理は、清掃事業のひとつではあるが、ゴミ処理と違って、かなり特殊だ。ゴミならば移動も比較的簡単だが、し尿はいったんためるところが決まると、そこからは誰かが取り出すまでずっとたまり続ける。しかも誰もが取り出せるものではなく、そこから発するにおいも大変なものだ。
かつて“し尿”は、人力での汲み取りでしか方法はなかった。それが当たり前の時代に、神奈川県川崎市で発明されたのが「バキュームカー」だった。そんなバキュームカーは、ずいぶん身近な存在で、子供の頃には自宅にもよく来ていたものだ。現在では下水道が普及して、最近では、バキュームカーを見る機会はほとんどなくなってしまった。
このバキュームカーの誕生が、し尿処理に果たした役割は非常に大きいが、実用化に至るまでの相当な苦労が本書にはたくさん出てくる。
ここまで“バキュームカー”や“し尿”について考えさせられたのは、生まれて初めてだ。汲み取りに来たバキュームカーのホースの先にテニスボールがついていたのは懐かしい。このあたりの話も出てくる。バキュームカーのすべてがわかる本。