響きと怒り/佐野 眞一

■社会・政治・事件,龍的図書館

4140810602 響きと怒り―事件の風景・事故の死角
佐野 眞一

日本放送出版協会 2005-08
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 「尼崎列車脱線転覆事故」、「十七歳連鎖殺人事件」、「雪印乳業食中毒事件」、「JCO臨界事故」、「阪神淡路大震災」、「ニューヨーク同時多発テロ」の6件の注目を集めた事件、事故を取り上げている。本書は、それらすべての現場を訪れたルポルタージュである。
 いずれも、さまざまなシーンで前例として取り上げられるであろう事件、事故ばかりだが、あまりに規模が大きすぎて、その現場にいた一般の人々の存在は往々にして忘れられがちだと思う。
 事件、事故に居合わせた人々の視点で物事を見ることを忘れてしまう。これこそが風化であって、なぜ起きたのか?そしてそこに居合わせた人たちはどうしたのか?ということを記憶にしっかりととどめておく必要はあるだろうなと読んでいて思った。

 「十七歳連鎖殺人事件」について取り上げている箇所で…

家とは反対側にある国道一号線沿いには最近開店したばかりのマンガ喫茶がポツンと一件だけ派手な原色看板を出している。日本の大動脈のほぼ中央部の真横にふくらんだその光景はね治療不能に陥った大動脈瘤をなぜか連想された。そしてその大動脈瘤が突然破裂し、鮮血が飛び散るイメージに、十七歳の少年による不条理な殺人事件が重なった。

 派手な原色看板と国道一号線を血管と大動脈瘤に見立てて、事件が起きたから破裂されて…みたいな表現はどうかなぁ…と。他にも、ゴミ袋が薄紅色だとか、少年の高校のグラウンドが赤レンガ色、名鉄が赤色だとか、血を連想させる土地だと…いくらなんでも、ちょっと考え過ぎじゃないかななんて思った。

(2005/11/5) 【★★★☆☆】 -05/11/05更新