夜のピクニック/恩田 陸
夜のピクニック 恩田 陸 新潮社 2004-07-31 |
夜通しただ歩き続ける「歩行祭」という高校行事の、わずか1日の出来事だけを追った小説。これだけを書くと何とも味気ないけれど、わずか1日の出来事を通して、生き生きとした高校生たちの様子、心情が垣間見える。
著者の表現豊かさにはびっくりする。著者はいくつくらいなんだう…と思ったら、もう40を越えているというのだから感性が若いというのか豊かなのか…奇をてらった表現は何もないのに、気持ちが伝わってくるようだ。
当日までは、歩きとおせるだろうかと不安にうじうじしてるんだけど、始まってしまえばあっというまで、心に残るのは記憶の上澄みだけ。終わってしまってからようやく、さまざまな場面の断片が少しずつ記憶の定位置に収まっていき、歩行祭全体の印象が定まるのはずっと先のことなのだ。
うんうん。と思わせるような場面が次々と現れる。たったひとつの高校行事だけを追った話だから、そんなに大きな事件が起きるわけでもないのだけれど、話にどんどん引き込まれていく感じがした。
そんな場面を見ていると、できることならばまた、中学生とか高校生に戻ってみたいなぁ…なんて思った。あれだけ早く大人になってしまいたいと思っていたのに、大人になってみると、あまりになんてことなかった…
(2005/11/5) 【★★★★★】 -05/11/05更新