大仏破壊/高木 徹

■社会・政治・事件,龍的図書館

4163666001 大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか
高木 徹

文藝春秋 2005-01-15
売り上げランキング : 143107

Amazonで詳しく見る by G-Tools


 この本を読むまで、アフガニスタンのバーミヤン遺跡にあった大仏のことなど、自分も含めて忘れかけていた。世界の一般的な世論だって同じようなものだと思う。特にアメリカの同時多発テロ以降は一層そちらの方に目が向いてしまった。
 しかし、このテロの原点は、バーミヤン遺跡の大仏破壊にあったと言っても過言ではないことがよくわかる。
 一時期アフガニスタンが注目されたとき、「タリバン」とか「アルカイダ」という言葉を見聞きしたから、聞き慣れてはいるけれど、一体それらがなんなのかわかっている人はそう多くなかったと思う。もともとNHKの番組のための取材が元になっていることもあって、ちょっと取っつきにくいアフガニスタン情勢がとてもわかりやすく書かれている。

 タリバンが最初から、世界を敵に回すような存在ではなく、崇高な理念を持った集団で
あったこと、徐々に変質しつつあったタリバンの中にあっても、なんとか軌道修正しようと努力した人たちがいること、オサマ・ビンラディンのしたたかさはただならぬものであること、大仏を破壊から守ろうと尽力した日本人外交官がいたこと…

 大仏が破壊されるまでの経過を追っていくうちに、一気に読んでしまえる感じの本だった。これまであまり関心のなかった地域だったが、読み終えると身近に感じられるようになってきた。
(2005/3/27) 【★★★★☆】 -05/3/27更新