13歳からのテロ問題/加藤 朗
13歳からのテロ問題―リアルな「正義論」の話 加藤 朗 かもがわ出版 2011-09 |
いわゆる、“9.11”以降、世界が大きく変わったというのは異論のないだろう。
実際、この日を境に、テロという言葉を見聞きしない日はないのではないかと思うくらい多くの事件が起き、さまざまなテロへの対策がなされている。
しかし、テロはいっこうに減る兆しを見せない。
「そもそも、テロっていったい何だろう?」
日常的にニュースで伝えられると、いつの間にやら、知った気になってしまう。
本書は、中学生11人と、ファシリテーター役の著者が、そんなテロについて、以下の4つのテーマに分けて、徹底議論する。
テロとは何か
テロはなぜ起きる
テロ(暴力)は許されるか
テロのない世界をめざして
登場する中学生は、やたら聡明で、なかなかいいことを言う。大人でも、これほどまで深く考えられる人は、そういないんじゃないかと思うくらい。
各テーマで議論したあとには、大人のための補習授業のページがあり、さらに詳しい解説をしている。
いくつか気になった箇所を記録しておく。
そもそも、テロとは価値判断を含んだ言葉である。
立場によって、テロの定義が変わる。
テロは、一方の当事者が非国家主体である。
「目的至上主義」、「人命至上主義」と「功利主義」
つまり、多数の犠牲を生じさせないために、少数の犠牲はやむを得ないか?
その結果、多数の命を守るために、人道的武力介入という矛盾が生じる。
貧困がテロを起こすわけではない。
実際、オサマビンラディンは裕福な家に育っている。
根本原因は、大切にしているののを踏みにじられたと感じたとき
いろいろ考えさせられたが、結局のところ、諸問題の原因は「価値観の違い」にある。
そう言ってしまえばそれまでかもしれないけど、お互いに対立する相手の価値観の違いを、少しでも理解するところに、解決の糸口がある…のかも。
実は、読む前までは、「テロを詳しく知ったところで解決なんてするわけがない」とすら、思っていたが、読み終えると、もしかすると。何か解決策があるんじゃないか?と、小さな希望みたいなものを感じた。
問題の根本について、避けるのではなく、きちんと向き合って、あらためて考えてみることの大切さを知った。