変な家/雨穴

■文学・評論,龍的図書館

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変な家
雨穴
飛鳥新社 (2021/7/22)

どこで見つけたのか忘れてしまったが、電車の広告などでもあったから、広告で知ったのだろう。

間取り図だけで、その家の特徴を読み取るというのは、いわゆる名建築を鑑賞するのと同じように、設計した人の意図を読み取る面白さがある。

冒頭に出てきた、もっとも特徴的な「窓のない子供部屋」とか、部屋と部屋にある謎の隙間とか、たしかに、言われてみれば…みたいな間取りで、なぜこんな仕掛けがあるんだろう?と考える楽しさはあった。

でも、それ「実は殺人のために作られた」となると、一気に現実味が薄れてしまい、その段階で、本書がミステリー小説だと気が付いた。

変わった間取りの家を紹介する本だと勝手に思い込んでしまっていたから、ちょっとビックリした。

そういう理由もあったせいか、読み進めれば進めるほど、内容が頭に入ってこなかった。

実は、住んでいた人たちを辿るとかつての名家のしゅっしんで、本家と分家に分かれて没落したり対立したとか、祈祷師が出てきて…とか、いかにも小説っぽい話になってくると、そのややこしさも相待って、読むのが面倒になってしまった。

この変わった間取りを成立させる目的で、無理矢理話を作ってるようにしか思えなくなった。

途中で、何度も読むのをやめようと思ったが、せっかくなので読み進めたもの、なんでも“あり”の状態だから、何が起きても意外感はなくて、何が出てきても驚けなかった。

結末はどうなるんだろうという感じもなかったために、ミステリー小説なのに、最後はほとんど読み流すという状態だった。

間取りという切り口が面白そうだっただけに、読後感は「残念」の一言に尽きる。

Posted by ろん