6011 前広(発令22日目)
何気なくニュースを見ていたら、「首相、9月入学制『前広に検討』」という見出しを見つけた。
何だ?前広…って。
安倍晋三首相は29日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校長期化を巡り、導入議論がある9月入学制に関し「これくらい大きな変化がある中では、前広にさまざまな選択肢を検討したい」との見解を示した。
記事を読めば、まぁ、前向き…みたいなもの?
正直、これまで見たことも聞いたこともない言葉なので念のため、辞書を検索すると…。
三省堂 大辞林 第三版
前もっておこなう・こと(さま)。
歴史民俗用語辞典
前もって。あらかじめ。
まぁ大辞林にも出てるし、言葉の使い方としては問題ないのだろうけど、歴史民族用語辞典にも出てくるくらいだから、一般的な言葉ではないといっても過言ではないだろう。
安倍首相は、なぜ、そんな言い回しをしただろう?
ただ、以前から、妙な言い間違いが話題になる。
たとえば、云々(うんぬん)を“でんでん”と言ったり、已みません(已みません)を=“いません”と言ったり…。
これらが何を意味しているかと言えば、自分の言葉で語っていないからだ。
読むだけで、言葉の意味を理解していないから、言い間違えるのだ。
意味を理解していたら、こういう言い方が合ってるだろうか?…と気になるはずだが、そういう雰囲気は微塵も感じない。
そして、この「前広」。
川越で長く暮らしてると、つい“丸広”を思い出してしまうが、当然ながら無関係だ。
普段から使いもしないだろう前広をこの答弁で使うというのは、結局は、“自分の言葉”ではなく、官僚かブレーンから上がってきた言葉を、そのまま使ってるに過ぎない…ということだ。
原稿のなかに“前広”という言葉が入っていたら、もっと世の中の人が使ってる言葉に言い換えたっていいはずなのに。
それができないというのは、リーダーとしての資質を問われるくらいの問題だと、僕は思う。
ただ、安倍首相が、まったく“自分の言葉”を使わないわけでもないのだ。
代表的な例が、桜を見る会を参加を募る文書が地元有権者に送られていた問題に追及を受けた答えが、「募っている」が「募集」ではない…だった。
募集という言葉を使えないから、言い換えただけで、どう考えたって意味が通らない。
こんなことを言う人は、彼以外誰もいないはず…つまり、これは、間違いなく彼自身の言葉なのだ。
“自分の言葉”を使う場面が間違ってる。