昭和解体/牧 久
今年4月で、JR発足30周年。
国鉄がJRに変わったころ…僕は中学生だった。
なぜ国鉄が分割民営化するのか? 中学生でも、おぼろげながら、その理由を理解していたような気がする。
でも、なぜ、その解決が、分割民営化だったのか? …ということについては、わかったような、わからないような…といった感じだった。
かつて、利用者を無視したストライキが頻発し、激しさを増した労働組合や政治闘争を止めるのが目的だった?…と認識はしていたものの、その背景は、まったくもってわからなかった。
そして、なぜそのような状態になるまで、手が打てなかったのだろう?ということも、疑問だったが、本書でその謎は解ける。
かなりのボリュームがあるが、国鉄が分割民営化するまでの詳細なドキュメントは、読み応え十分だった。
まず気付かされたのは、自分の勝手なイメージでは、当時の労働組合の”暴走”が、国鉄を分割民営化に至らしめたのかと思ったら、そう単純なものでもなかった。
もちろん、当時の国鉄労働組合員のひどい勤務状況は目に余るものがあったのも事実。
勤務時間内30分の入浴、ヤミ休憩は昼食時80分。夏の暑い日は昼寝60分。ヤミ休暇は旅行会2日、海水浴、花見、忘年会などで約6日間、超過勤務は1時間やっても8時間分支給。翌日の午前中は休み。(p.244)
しかし、国鉄当局もそうした状態に至ってしまうまでの対応に問題があり、結果的に手を打つことができなくっていくさまは、読んでいて、”ハラハラ”してしまう。
駆け引き、裏工作、取り込んだり、取り込まれたり…。
分割民営化を主導するのは、皆、当時は課長クラスで、その後、JR各社で社長を務めるような人たちばかりだったのがとても印象的だった。
国鉄が分割民営化したことで、戦後の昭和を作り上げてきた日本の労働運動や政治体制が大きく変わることになった。
タイトルが「国鉄解体」ではなく、「昭和解体」としたことに合点がいく。
当時、やりたい放題にやってきた組合員たちをはじめ、当事者たちは、今何を思っているだろう?