4920 気付かない幸運
朝からの雨で、通勤電車はいつも以上に混雑をしていた。
そのため電車も遅れ機気味だった。
とある駅に着くと、乗換駅だけあって、かなりの乗客が入れ替わった。
そしてドアが閉まる。
しかしいっこうに発車しない。
どうやら別の車両でドアが閉まり切れていないらしい。
しばらくすると、いったん扉が開いた。
そして、そのわずかに開いた瞬間に、階段を駆け下りてきた男性が、さっと乗り込んだところで、再びドアが閉まった。
つまり、この男性は、”たまたまドアが閉まらなかった”という幸運に恵まれたために、本来であれば乗りそびれたであろう、この電車に乗ることができたのだ。
もちろん、この乗客は、当然ながら、このドアが開いていた経緯は知っているはずはないし、そんな幸運に恵まれただなんてことにも気付いていない。
この幸運を知っているのは、おそらく僕だけだろう。
幸運というモノには、享受している本人は気付かない場合もあるのだ…ということを、目の当たりにした気がした。