4518 聞き間違いではなかった
この前の週末、図書館でのできごと。
「技術系の資料を探しているんですが…」
別に耳をそばだてて聞いていたわけではなかったが、ふと耳に入ってきた声だった。
見ると、カウンターにやってきたのは、初老の男性。
これだけでは、どんな本を探していいのか見当が付かないよなぁ…と、僕に尋ねてるわけじゃないのに、そう思った。
「どういったジャンルでしょう?」
応対した司書さんは、こう答えた。
当然だ。
すると、男性は、すかさずこう言った。
「ようかい…」
司書は、短く、
「えっ?」
…と、聞き直す。
男性は、再び同じ言葉を言う。
「ですから、ヨウカイ…」
僕は司書の発した、短い「えっ?」という声の裏にある思いが、伝わってきたような気がした。
ここで想像した、ようかいとは…もちろん…
おそらく図書館の職員も、僕と同じことを考えたに違いない。
その後、ようかいとは、妖怪ではなく、熔解であることが判明する。
めでたし、めでたし。