住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち/川口マーン恵美

■人文・教育・思想, 龍的図書館

30年の長きにわたってドイツに住んでいる著者が、ドイツと日本の違いを、自身の経験をふまえて、解説する。

著者自身の身の回りの出来事が主体で、客観性はあまりない感じではあるけど、興味深いエピソードが豊富に取り上げられている。

いくつか印象的だった例を挙げてみると…

ドイツでは、日本人からするとびっくりするくらい長い有給休暇(年間6週間!)が与えられ、有給休暇と病気による休暇は、厳密に分けられているという。

ひとたび病気となれば、最低2日〜3日は有給休暇とは別に休むことができる。

それ以上休むときは、医師からの診断書が必要というシステムだ。

日本ではちょっと考えられないが、病気で休むというのは、労働者の当然の権利だという。

また、こんな感じだから、年間6週間もの有給休暇もきっちり使う。

どうしてこんなに休めるのかと不思議に思うが、社会(会社)全体が、休む人がいることを前提とし、仕事を別の人が代行することができるように考えられているのだ。

そのためには、引き継ぎのマニュアルなどの整備が前提となるから、日本のように「この人がいなければわからない」といったことが起きない。

ドイツの就職活動も独特だ。

親方(マイスター)の下で修行を積むという、ドイツ伝統の徒弟制度の考えの影響を受け、就職したい会社に最低でも半年間勤める(インターン)のがふつうらしい。

会社側は、学生の仕事ぶりを見られるし、学生は自分にあった会社かどうかを文字通り、身を持って体験することができる。

また会社は、その人間が何ができるかを問うので、日本のように年齢が問題になることはないという。

一方、日本の就職活動での面接は、まるで「隠し芸大会」のようだと指摘する。

日本の就職活動の不可解さは、先日話題にしたとおりで、たしかにおかしな点も多い。

ただ、ドイツのやり方も決していいことばかりではなく、インターン期間の賃金がかなり低く抑えられているとか、就職する年齢が遅れてしまうなどといった弊害もある。

自分の感覚だと、以前は、往々にして、日本は欧米に比べて遅れている…といった感じで、進んだ欧米に学ぶべきだ…といった論調が多かった気がする。

最近は、その揺り戻しか、日本だって捨てたものじゃないみたいなことを見聞きするようになった(その背景には、あまりに行き過ぎた自虐史観もあるように思う)。

日本にしても、ドイツにしても、一足飛びに現在の状態になっているわけではなく、それぞれの国で培ってきた歴史の積み重ねが今に繋がっている。

だから、どちらがいいとは言い切るのは行き過ぎで、いいところを参考にする程度にとどめておくのが、健全だと思う。

ドイツは、第二次世界大戦における敗戦から驚異的な復興を遂げたとか、技術立国、工業国といった日本と共通点が多いが、なかなか知る機会の多くないので、ドイツ現在の様子を知ることができて楽しかった。

ちなみに、タイトルにある「8勝2敗」は、実際に日本とドイツと勝負させた結果ではなく、あくまで著者の感覚的な表現のようだ。

Posted by ろん