自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい/森 達也

■人文・教育・思想,龍的図書館

やはり気になったのは、このやたら長いタイトルだ。

いったいどんなことを訊かれるんだろう?と思いながら、ページをめくった。

本題は、冒頭の章で取り上げられていた。

よくある、被害者やその遺族のことを考えるべきという主張に対し、著者は言う。こう言っている人は、決して当事者ではない…と。

そして、もし死刑が、被害者遺族のためだとしたら、天涯孤独な人が殺された場合、そのはんにんの受ける罰に差が出るのか?とも。

また、死刑制度反対の反論として、「被害者の人権はどうなる」という意見に対しては、加害者の人権の配慮は、被害者の人権を損なうのか?と問う。

さらに、別の章でも取り上げられていたし、僕も以前から、取り上げているが、裁判で、明らかにおかしい判決などを見ると、実は、次々と冤罪が作られているのではないか?とか、犯人でない無実の人を死刑にしているのではないか?という気になってくる。

僕は、死刑制度は当然必要だと思いながら読み進めていたが、「待てよ」という気になってきた。

実際、死刑に犯罪の抑止力が期待できないとか、情報公開されていない状況、「死にたくて人を殺す」なんていう事件が現実に起きてしまうと、果たして、何のための死刑制度なのだろう?という気にもなってくる。

解決の道筋すら見えない、領土問題。

これに対して、正当な権益と引き替えに譲渡してしまえという発想は、簡単には相容れないけれど、荒唐無稽か?というとそうではない気がしてきた。領土問題を解決させる目的にもよると思うけど。

ハンセン病に関する話や、裁判員裁判の不可解さなど、以前から僕自身気になっている話題が取り上げられ、我が意を得たりという箇所も多かった。

答えは、ひとつじゃない。

白か黒のどちらかでもない。

グレーだって答えだ。

もしかすると、まったく色違いかもしれない。

冷静に多面的に考えているつもりなのに、いつの間にか、世の中の常識に囚われ、落ち着きを失い、事象の側面からしか見ていなかったのかもしれない。

極端とも思える意見もあるが、かといって押しつける感じではなく、とても読みやすく、読み進めていく途中で、いろいろ考えさせられた。

Posted by ろん