3745 渋谷川をたどる旅(上流・暗渠編)
以前から、石神井川をたどったり、神田川とたどったりする企画を実行しているので、今回の渋谷川をたどるという企画は、その続きみたいなものだ。
渋谷川は、東京都渋谷区の宮益橋から天現寺橋までの2.6kmを流れる川で、その先の海まで古川(ふるかわ)と名前を変える。
今回歩くのは、その上流。渋谷川の水源をたどるっていくと、新宿御苑付近となるという。
これまでたどってきた石神井川や神田川と大きく異なるのは、この渋谷川のさらに上流部分は暗渠となっているということだ。
暗渠とは、地中に埋められた河川や水路のことで、意識して探さないとなかなかわかりにくい。
東京オリンピックが開催される直前に暗渠化されそうだから、その痕跡もかなりなくなりつつあるはず。そういった意味で、今回はこれまでとは、ちょっと違う旅となりそうだ。
まずは新宿駅までやってきて、そこから新宿御苑に向かうことにする。
その前にちょっと寄った、高島屋に謎のアートが…。タイトルは“希望玉”。フンコロガシ…だよな?

新宿御苑の北側を通る甲州街道に沿って歩き、外苑西通りとの交差点のすぐ手前に、巨大な石碑がある。
1895年(明治28年)に建てられたこの石碑には、玉川上水を開いた“玉川兄弟”の功績が書かれているそうだ。
で、この玉川上水から分かれた水が、渋谷川の源流のひとつとなって流れ出しているという。
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また新宿御苑の中にも水源があって、途中で渋谷川と合流するようだ。
できるだけ新宿御苑に沿って歩くと、あやしげな空き地が見えてくる。近くまで寄ってみると、階段があって降りられるようになっていた。


まさに、ここが渋谷川そのものだった。暗渠化されているせいか水の流れはないものの、腐葉土のように、地面は柔らかかった。

とりあえず、行けるところまで行ってみようと思ったら、行き止まり。

すぐ近くに、多武峯神社という小さな神社があって餅つき大会の真っ最中だった。
そのすぐ隣にさらに小さな公園があり、その奥に、これまた小さな碑と説明版があった。
これによれば、現在の三菱鉛筆が、1887年(明治20年)、ここで鉛筆を製造を始めたという。動力は渋谷川の水車。
水車が動力になるというくらいだから、かなりの水量があったのだろう。


暗渠になった渋谷川を歩いて行こうと思ったら、なぜか、ここには鍵が掛かって入れないようになっていた。
別に入っても差し支えなさそうな雰囲気なのだけど…。

いったん渋谷川から離れて、さらに行くと、細長くて小さな公園があった。もちろん、これも渋谷川の暗渠。

中央線をくぐると、国立競技場の脇に出た。
しばらく国立競技場の敷地を歩いていたが、どうも川の痕跡らしきものがまったくない。
…と思ったら、どうやら国立競技場の外に並行する道路との間の空間が怪しかったということに、歩き通してから気がついた。
明治公園を過ぎ、引き続き、外苑西通りを歩くが、このあたりになると、完全に川の痕跡はなくなる。
事前に調べていたところで右折すると、まるで川が流れていたかのような緩やかに蛇行した道路が現れた。
この下にかつての渋谷川がある。

その証拠に、かつてここが川だったことを示す、原宿橋と書かれたコンクリート製の親柱があった。

両脇に若い人向けのお店が多くなってくると、通りを歩く人も増えてくる。
ところどころで、川があったことを示すブロックなどが見つかる。

表参道に出た。交差点にあった交番の前に、かつてここに川が流れ、水車があったことを示す、葛飾北斎の浮世絵を紹介した案内版があった。

誰も見向きもしないことかもしれないが、そういうことをあえて意識して歩くというのは、なんだか楽しい。
小学校のフェンスには、水車を思わせる柄が使われていた。

表参道を横断すると、参道橋と書かれて親柱。ここから先は、“キャットストリート”と呼ばれる商店街となる。

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この通りは、構造がちょっと特徴的。
通りと店の間に段差があるのだ。これは、川にそのまま蓋をして暗渠としたことで、以前からあった並行する道路に比べ、結果的に盛り上がってしまったらしい。
“バリアフリー”なんて発想のなかった時代らしい対処の仕方だ。
暗渠(道)の真ん中に穏田橋の親柱があった。今までは暗渠(道)の両脇にあったことを考えると、場所は移されたのだろうか。


やがて暗渠(道)は明治通りの交差点に出た。ここには、宮下橋と書かれた親柱があった。

明治通りを横断し、山手線との間の宮下公園の脇が、かつての渋谷川。
現在はバイクの駐輪場となっている。
山手線をくぐってきたのは、おそらく渋谷川の支流だろう。
いずれこちらも源流をたどってみたい。
渋谷駅にやってきた。


渋谷川は、東急百貨店東館の真下を流れている。
渋谷駅の周辺はいま大規模な再開発の真っ最中で、この風景もどんどん変わっていくだろう。
なかでも、東急百貨店東館は3月いっぱいで閉館することが決まっており、渋谷川も当然その影響を受けるものと思われる。

東急百貨店東館だけは地下がない。
それは先述の通り、真下を渋谷川が流れているためで、1階の建物にも影響がある。その例が、このエレベータの設置の仕方だ。
本来、エレベータを動作させるためには、床下に相応の空間が必要となるが、川があるためその空間を確保できず、その分だけ階段を設けているのだ。
相変わらず見えない渋谷川は、このまま東横のれん街の真下を流れて行っているはずだ。
ということで、今日はここでおしまい。
次回は、いよいよ、暗渠から抜けだし、正式に、渋谷川として登場することになる。
