中の人などいない/NHK_PR1号
新潮社
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“中の人”とは、もともとは着ぐるみの中に入っている人のことを指していて、これが転じて、企業などの当事者や、ウェブサイトやブログ等の管理者のことを言う。
ツイッターにおいて、NHK広報局のツイートが“ユルい”という話は、以前から聞いたことがあったが、僕自身、あまりツイッターが向いていなかったこともあって、特に意識することはなかったが、この本をきっかけにフォローしてみると、かなり面白かった。
さすが、52万人ものフォロワーを集めているだけのことはある。
この成功は、このアカウントを担当しているNHK_PR1号(中の人…と言いたいところだけど)の考え方や性格によるところが大きいと思うし、PR1号の一連の言動を許容したNHKという組織があってこそだと思った。
そもそもこのツイッターのアカウント、最初は、広報担当者NHK_PR1号の独断で取得し、“非公式”といいながらも大胆にも、無許可で最初からNHKを名乗っていた。
その後、事後承諾という形ながらNHKに認められるも、試行錯誤で、“中の人”なりのツイッターや、その先にいる人たちとの付き合い方を学んでいく過程が、詳細に語られているのが、この本だ。
2012年3月11日の震災直後、広島の中学生が、これを見れば助かる人がいるのではと思い、NHKテレビ放送を勝手にインターネットに配信し始める。
NHK_PR1号は、停電でテレビがご覧になれない方もいるだろうと、責任は自分が負うと言い、独断でこの情報を広める。
こういった行動は、誰でもできるということではない。やはりこの人だからこそできたと思う。
一方で…
@NHK_PR、エイプリルフールのジョークについて「不快な思いをさせてしまいました」と謝罪
NHK広報局(@NHK_PR)が昨夜のエイプリルフールジョークについて「一部の方に非常に不快な思いをさせてしまいました」と謝罪し、ツイートを削除したことをTwitterにて報告している。
実際、謝罪する必要があるかどうか?という議論を巻き起こしたり、そもそもこうしたツイート自体に批判的な人からの“攻撃”など、いろいろと苦労は絶えないようだ。
それでも、現在でも続けられているというのは、“中の人”が、“NHKの中の人”というかたちで、視聴者と隔てられてほしくないという思いからなのだ。
そう考えると、ツイッターにしても、ブログにしても、書いてる人の性格が良く現れるものだと痛感。このNHK広報局の担当者の人柄が、このツイッターのアカウントを支えているのだ。
先日、知事の発案で、都庁の全部署でツイッターをすることになり、そのアカウントを短時間で一気に取得したことから、東京都公式ツイッターアカウントが凍結されアクセスできない状態になったというニュースは記憶に新しい。
本気でツイッターのことを考えれば、こんなミスをすることはないような気がする。ツイッターは、それが合う部署と、それに思い入れや意思のある担当者などがあって、初めて維持できると思った。
本書とは直接関係がないが、ちょっと気になったことも…
NHK_PR1号ご本人がいるにもかかわらず、本人の意図などまるで無視して、フォロワーを集めるテクニックを紹介するセミナー(“はじめに”より)や、すでに4万人のフォロワーを集めていたNHK_PR1号に、ツイッターの素晴らしさを説き、3000人のフォロワーを付けたアカウントを売りつけようとした広告代理店(p.70~)など、ツイッターを取り巻く、いい加減な連中の姿も目に付いた。