ためらい/J・P・トゥーサン
ためらい
J・P・トゥーサン
集英社
図書館で返却されてきた本のコーナーに置かれていて、タイトルが気になって手に取った。
友人に会うため彼の住む海辺の村にやってきた主人公。
一緒に連れてきたのは、ベビーカーに乗せた彼の息子だ。
今朝、港で猫の死体を見た…という、なんとも不吉な場面から話は始まるが、この光景が、後々の場面まで引き継がれていく。
内容は、最初から最後まで、タイトル通りで、主人公は、とにかくためらっているというもの。
ただ友人に会いに来ただけなのに、ためらってしまい、どうしても会えないのだ。
登場するシーンは、主人公の気持ちが乗り移ったような、いつも、どんよりとした天気で、彼を見守る僕の方まで、鬱々としてくるが、それは、描写が繊細、緻密だからで、情景が目に浮かんでくる。
もはや犯罪だろう?とツッコミを入れたくなるような“異常行動”までしてしまうのは、それほどまで、ためらっていることの証左だろうが、主人公が目にするものすべてが、彼を追い詰めていく。
ひとつの段落に改行がまったくないという、ちょっと不思議な構成で、あまり読みやすくないし、内容が内容だけに、スッキリとしないが、ふだんは、こういった内容の本を読まないだけに、新鮮だった。