47都道府県これマジ!?条例集/長嶺 超輝

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47都道府県これマジ!?条例集 (幻冬舎新書) 47都道府県これマジ!?条例集 (幻冬舎新書)
長嶺 超輝

幻冬舎 2009-11-26
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法律というと、そつのない堅苦しい文章で書かれている…と思いがちだが、地方自治体の制定する条例は、かなり自由で、奇抜なものが少なくないようだ。

そうした、ちょっと変わった条例を、都道府県別に集めたのがこの本。

気になった条例をいくつかビックアップ。

千代田区地球温暖化対策条例

「千代田区は日本の経済の中心、だけど比較的緑が多くて、産業と自然の調和がとれた、過ごしやすい区だよね。」

「今よりもっと千代田区を緑で いっぱいにして『緑の区、千代田』と呼ばれるようにしたいね。」

この条例の前文は、中学生によって書かれた文章らしい。ただ自画自賛の文章は、ちょっと鼻につく。

東京のしゃれた街並みづくり推進条例

昨日当選したばかりの石原慎太郎都知事によってネーミングされたと聞くと、「あぁ…」って思う。

富山県球根検査条例

よく見つけるなぁ…1,000球につき37円らしい。

飛騨市ギフチョウ保護条例

第7条 市長の許可なくして保護区域における捕獲等をした者又は第3条の規定による許可に違反した者は、捕獲等の品目を押収するとともに次により過料に処することができるものとする。
(1) ギフチョウの採取5羽未満 10,000円以内
(2) ギフチョウの採取5羽以上10羽未満 25,000円以内
(3) ギフチョウの採取10羽以上又は卵、幼虫、さなぎ、カンアオイ等の採取 50,000円以内

捕獲したチョウの数によって、過料が違うようだが、この金額の刻み方が、なんだか細かい。

旧新潟県中里村雪国はつらつ条例

雪を克服して活力ある自治体を目指す条例だった「雪国はつらつ条例」を、誤って「雪国はつらいよ条例」としてしまった教科書。村が抗議して訂正されたが、その後、村は、この騒動を逆手にとって、本当に「雪国はつらいよ」条例が存在したら、どんな内容になるか?といういことを全国から募集したそうだ。雪国の他にも、「農山村はつらいよ」「都会はつらいよ」「その他」の4つのテーマを設け、全国から応募が集まったそうだ。

高知県高知市 まちづくり 一緒にやろうや条例

何でまちづくりをするが?
みんなぁにとって、「のうがえいまち」にしたいき
なんかあった時に、すっと助け合える関係にありたいき
このまちに住んじょって良かったと思えるようになりたいき
(中略)
ほんでこの条例を、きおうてつくったがよ
どう ! ?

・前文は、自分たちの想いを直接的に表現したかったことと、高知市の条例であることにこだわった結果、土佐弁(方言)を用いた。土佐弁の意味を汲んだ(直訳でない)形で標準語の前文も併記した。

たしかに、地元のための法律が条令なのだから、地元の人たちがわかればそれで十分なのだろう。意味がわからない人のために、標準語訳も付けてある配慮が面白い。

志布志市 子ほめ条例

第2条 学校長は、地域住民と協力して学校教育及び日常の生活の中で次の各号のいずれかに該当する児童生徒を被表彰候補者として志布志市教育委員会(以下「教育委員会」という。)に推薦するものとする。
(1) ボランティア賞 学校又は社会に奉仕している者
(2) 親切賞 人に親切な行いをしている者
(3) 親孝行賞 親孝行をしている者
(4) 友情賞 友達のことを考え、仲間づくりに努めている者
(5) あいさつ賞 いつも明るく、よくあいさつをする者
(6) 努力賞 学校及び社会生活において努力している者
(7) 創造賞 いろいろな事柄に創意工夫をしている者
(8) 勤労賞 勤労を尊び、学校づくり又は地域づくりに努めている者
(9) 読書賞 平素からよく本を読んでいる者
(10) 学芸賞 学業、文化又は芸術に優れている者
(11) スポーツ賞 スポーツに優れている者
(12) 特別賞 前各号に掲げる者以外の者で表彰に値するもの

子どもを褒めるということは大事だろうが、その実践のために、こんなにたくさんの章を与えるのも、どうなんだろう? でも、褒める具体的な内容を挙げてくれた方が、実践はしやすいのかな?


本書の“おわりに”でも書かれているが、日本全国似たような街がどんどん増えているものの、それぞれの街の置かれた状況、そして、編み出された対策や問題解決に向けた人々の情熱には、ひとつとして同じものはないのだ。

さまざまな条例から、街の個性がよく見えてくる。

しかし、かつて、伝統的な旧町名が次々と消滅したように、最近は市町村合併でこうした独自の条例がどんどんなくなっていくことが少なくないようだ。

街から個性が消えていくのは、やはり寂しい。