いきものもどき/山村紳一郎

■いきもの,龍的図書館

いきものもどき―世の中の「もどき」vs「本家」な生き物が大集合! いきものもどき―世の中の「もどき」vs「本家」な生き物が大集合!

誠文堂新光社 2009-06
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生き物の図鑑には“○○もどき”という名前を見つけることがある。

もどきとされた生き物と、本家の生き物を見開きのページに並べて、どのあたりが“もどき”なのか、ポイントを解説している。その似てる度合いを“もどき度”として筆者が勝手に採点している。

もっとも、もどきと名付けられた生き物にとって、人間にかつてに名付けられただけで、どちらが本物とか偽物ということはないのだけど、敬意や背景を知るのは楽しい。

なかには、文字通り本家そっくりの“もどき”や、本家とは似ても似つかぬ“もどき”もいて、もどき学の奥深さを堪能できる。ユニークで的確なつっこみに、笑わされた。

・シャープゲンゴロウモドキ(なぜ、頭にシャープ?)
・サソリモドキ(本家が神経毒だけど、もどきが酢酸の一種)
・フクロモモンガダマシ(もどきは、飛べない)
・ペンギンモドキ(絶滅してるけど、出自がペリカンで体長が3m!!)

特に、系統といか血筋がまったく違っているのに、本家そっくりになってるけど、出自がばれてしまう生き物が気に入った。

もどき度100% アユモドキvsアユ
もともと“ドジョウ”という出自が全く違う種類なのに、なぜかアユにそっくり。でも、ヒゲが残っちゃっているのが、その出自を彷彿とさせる。

もどき度100% アゲハモドキvsジャコウアゲハ
体内に毒を蓄積して身を守るジャコウアゲハそっくりなのが、アゲハモドキ。でも、出自が蝶ではなく蛾なので、つい羽を開いて止まってしまう点で、お里が知れる。

とてもおもしろい切り口で、生き物に詳しくない人でも、十分楽しめる。この本の体裁はどこかで見たことがあると思ったら、あとがきにかえて で、「へんないきもの」シリーズにインスパイアされた面もあるとあった。著者が「へんないきものモドキと言わないように」と言いたくなるのも、ちょっとわかる。

どちらの本も生き物に新しい“視点”を持ち込んだ功績は大きい。生き物に対する敬意を感じずにはいられない。