1626 「ありえないこと」って…

定点観察


事故が起きたのと同じ型の車両

 昨日の話の続きではないけれど、想定外のことは、ごく身近で起きる。
 東京メトロ有楽町線で、列車走行中に扉が開いたという事故。理屈の上では扉は開かないはずなのに、実際に開いてしまった。詳しい調査をしないとわからないが、一部だけ開くというのは考えにくいから、実際に全部の扉が開いたことはほぼ間違いない。被害がなかったのが不思議なくらいだ。

 こうして、ありえないことが起きてしまうのは、結構ショックだ。

 特に鉄道車両はフェイルセーフの考え方が進んでいるから、事故は未然に防げることが多いはずなのに…。フェイルセーフとは、機械やシステムが故障したときには、安全な方に動作する考え方のことだ。

 例えば、車両と車両の連結器が外れたとする。もちろん重大な事故につながることだから、すぐに列車を止めなければならない。けれど、連結が外れてしまっているから事実上操作ができなくなってしまっている…こんな状態でも鉄道車両は絶対に止るようにできているのだ。これが、フェイルセーフの考え方だ。
 鉄道のブレーキは圧縮空気を掛けたときだけ緩むようになっている。だから、連結器が外れるということは、車両と車両をつなぐ配管も外れて、圧縮空気が逃げてしまう。そうすると、あら不思議(不思議じゃないんだけど)、列車は止るしかなくなるわけだ。

 鉄道にとって大事な信号機も、同様の考え方で故障すると「赤」しか表示しなくなるようになっている。レールには列車と信号機とが連動する信号が流れていて、ここがなんらかの理由で短絡(ショート)すると、やはり「赤」になるようになっている。
 ちょっと脇道に話がそれるけど、運転士や車掌は、二本のレールをショートさせるケーブルを必ず持っていて、もし列車が立ち往生したときには、そのケーブルを使って信号を「赤」にして、対向する列車や後から追ってくる列車に知らせていたなんてことを聞いたことがある(今でも使われているかどうかわからないけど)。

 踏切も同じように故障した場合は、遮断機が上がりっぱなしになるのではなくて、道路は渋滞してしまうかもしれないけど、必ず遮断機は下りっぱなしになるようになっている。よくできているでしょう?

 ただいくらこうした考え方や作りになっているといっても、結局はさまざまな理由によって事故は起きてしまう。尼崎の列車事故の時もそうだった。やはり「ありえないこと」が起きてしまう。
 こうなってくると、「ありえない」なんて言葉は、使わない方がいいんじゃないか…とまで思えてくる。

Posted by ろん