1611 夏のにおい

定点観察

 朝…。近所を歩いていると、どこからともなく、ほんのりと蚊取り線香のにおいがしてくることがある。蚊にとっては、猛毒の臭いなのかもしれないけど、僕にとっては、まさに夏を感じさせるいいにおいだ。このにおいを嗅ぐと、なぜだかほっとする。最近は蚊取り線香を使う機会がなくなったので、身近でこのにおいを嗅ぐことができなくなったのは、ちょっと残念な気がする。

 夕…。むせかえるような暑さがわずかばかり峠を越えて、埃っぽく生暖かい風が吹き抜ける。厚い雲が空を覆い始め、夕立が来そうな直前のにおい。決していいにおいじゃないけど、夏らしくていい。あのにおいはどこから来るのだろう? 蚊取り線香と違って実際に何かがにおっているというわけではなくて、おそらくは、空気に含まれる水蒸気や気温、周囲の環境の変化が、あのにおいを生んでいるのかもしれないけど、この感じ、どなたかわかりますか?

 夜…。夕立の雨がやんで、ゆっくりと日が落ちる。ようやく日が暮れて、暑い一日が終わろうとするころ、風に乗って花火の火薬のにおいがしてくると、あぁ夏なんだなぁ…と感じる。花火は音や光も大事だけれど、火薬のにおいも重要な意味を持っているような気がする。

 夏より冬の方が好きなんだけれど、これらの夏のにおいに気付く瞬間は、夏も悪くないなって思う。
 なんだかとりとめもない話だけど。…いつものことか。

Posted by ろん