ひとこと言わせてもらおう

定点観察

 この手の調査やアンケートの結果をニュースで知るたびに、その問題点を何度か指摘してきた。
 僕はこの分野では全くの素人なので、誤解している点もあると思うけれど、少なくとも僕自身が誤解しそうになるのだから、気付かなければ、この調査結果を見た人がそのまま受け入れてしまうのではないかと思えるので、あえて気付くたびに伝えたいと思う。もちろん、この意見をどう受け止めるかは、各人の自由だ。
 昨日の朝日新聞で「GW、収入高いと休みが多い 電通がネット調査」という見出しを見つけた。イヤな予感がして、実際に調査した電通のサイトで、この調査の内容(PDF)を見てみると、やはり思った通りの問題の多い調査だった。この手の調査やアンケートが公表されたら、以下の3点について意識してみてもらいたい。

 1.インターネットのみの調査であること
 インターネットは被験者の自発的な行動に依存するため、被験者がどのような意思によってアンケートに答
えたかが重要な要素になる。つまり、「まったくの無報酬」なのか「アンケートに答えたらもれなく○円もらえます」なのか「抽選で○○プレゼント」なのかによっても、回答する層が変わってくるはずである。また、つい忘れがちだが、アンケートに答えられる人は「インターネットができる人」である。つまりインターネットができない人は、回答すらできてないのだから、その時点で調査対象は狭まっていることを忘れてはいけない。

 2.調査に回答した層の内容が明記されていない
 新聞の見出しにもなっているくらいだから、今回の調査で一番の注目すべきポイントが、「収入が高いと休みが多い」という結果だが、これが実態を表しているかどうかが疑わしい。実際に収入が低い人の回答者数と、収入が多い人の回答者数の差はどれくらいあったのかが明記されていないのである。調査では年収400万円未満が5.9日で、1000万円以上の人は6.9日あるという結果になっているが、この内訳がわからないのだ。全体の回答者630人のうち、仮に収入が低い人が600人を占めていて、残りの30人が収入の高い人の回答だったしても、今回のような結果になってしまう。果たしてこれで正しい傾向を示したと言えるのだろうか?

 3.この調査の目的がはっきりしない
 実は一番大事なことだが、そもそもこの手の調査は、思いつきで行われるはずはなく、当然費用をかけて行うのだから、調査する理由があるはずだ。多くの場合この調査結果を元に企業や団体の活動に生かされることになるが、それは良くも悪くも調査結果を左右することが多い。設問内容である程度の回答結果を操作することができてしまうのだ。これはある程度やむを得ないが、であれば、その背景を知ることで偏向のある可能性を認識できるのに、この調査ではそれを明らかにしていない。

Posted by ろん