街の公共サインを点検する/本田弘之、岩田一成、倉林秀男

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街の公共サインを点検する
本田弘之、岩田一成、倉林秀男
大修館書店 (2017/7/25)

街を歩いていると、これでもかというくらいの注意書きを目にする。

おそらくほとんど誰も見ていない。

サインを表示するのは、それを伝えたいからのはずだが、実は必ずしもそうではなく、その場所の管理者が意思を示すことが目的になっているとしか思えないことが往々にしてある。

どう読まれるかではなく、どれだけ表示したかが問われてると“思い込んでいる”のだ。

だから、禁煙だとか通り抜け禁止といった注意書きが、ほとんど同じ内容で何枚も並んでいるなんてことが起きるのだ。

逆に、ピクトグラムっぽいオリジナルイラストとか、くどいほどの詳細で説明が盛り込みすぎの注意書きなど、おそらくは、良かれと思って作っているのだろうが、これも、サインのそもそもの目的を見失ってしまっているパターンだ。

また、先日、港区役所を「City Office」とするのか「City Hall」とするのかについて取り上げたことがあるし、ずいぶん前になるが「国会前」の案内が「Kokkai」ではなく「The National Diet」となったこともあるが、以前から個人的に、公共サインのあり方が気になっている。

外国語表記は日本語の読めない人向けにあるのだから、彼らが読めて理解できることが大切なのだけど、こちらも違和感を覚えることが多い。

本書は、街にあふれる注意書きや公共サインなど、たくさんの実例を挙げて、あるべき姿を解説していく。

読んでいて好感が持てるのは、各章の最後に、それぞれ“まとめと提案”が記されていて、どういったサインが望ましいのかについて、きちんと説明しているところだ。

公共サインに携わる人たちには、ぜひ見てもらいたい。

海外から日本の公共サインや注意書きを見たとき、どう理解されることになるかという点で、海外の事例はとても役に立つ。

自分も気になっていたほうだが、無意識のうちに“当たり前”の風景となってしまって、気づかなかったことも多かった。

たとえば、道路や地名の案内で駅を示す英語で、Stn.とかSta.といった略語表記が使われることがあるが、国立大学の留学生の多くが理解できなかったとの紹介があって、これは、けっこう意外だった。

よくありがちな、日本が劣っていて海外が素晴らしい…ではないことも本書ではきちんと紹介されていた。

たまたま…だろうけど、事例として挙げられているケースが、金沢駅や野町駅などつい先日行ったばかりのところとか、海外でも、ヘルシンキやベルゲンといった自分が行ったことのあるところが多く紹介されていたので、より身近に感じられた気もする。

Posted by ろん