生き物の死にざま/稲垣 栄洋

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生き物の死にざま
稲垣 栄洋
草思社 (2019/7/11)

最初、本書のタイトルから、野生動物が亡くなる原因を探る話なのかな…と思ったら、生き物たちの一生を紹介するエッセーで、イメージと違った…なんて思ってしまった。

しかし、読み進めているうちに、「生きる」ということと「死ぬ」ということが隣り合わせであって、死にざまを紹介することと、生きるということを紹介することは、実は同じ意味なんじゃないかと思えてきた。

コウテイペンギンやゴリラといった動物から、セミやゴキブリといった昆虫、はては雑草や“人間”まで、あらゆる生き物が紹介されている。

コウテイペンギンが南極の過酷な環境のなかで子育てをするための知恵が、あえて厳冬期前にメスが卵を産み、オスが卵を抱いてヒナを孵すという方法だった。

カバキコマチグモは、日本では珍しく毒を持つクモとして知られている(自分は初耳)らしいが、特徴的なのは、なんと生まれてきた子どもは、母グモを食べられることで成長するということ。

寄生虫が、自分の仲間を増やすために宿主の生き物の行動を操ってしまう事例を見ると、どんな生き物も、生きるために必死なんだと思い知らされる。

生き物たちの生きるための工夫の数々。

人間から見たら、なんでこんな行動をするんだろう…ととても理解できないことも少なくない。

でも、同じ人間同士でも同じような感覚で理解できないことも多々あるし、もっと言えば、自分自身だってよくわからない行動をしてしまうことすらある。

生き物たちは、ただ“生きる”ためだけに行動しているだけで、小難しいことを考えているわけではないのだ。

そう考えれば、「理解しよう」となんてせずに、ただ起きている事実を受け入れることのほうが、“前向き”なような気がしてくる。

そんな目で、生き物たちの生きる工夫を見ていると、なんだか自分も頑張ろう…って思えてくるから不思議。

Posted by ろん