世界で一番美しいレントゲン図鑑/Nick Veasey
ふつうレントゲン写真といえば、医療用だし、その特性上あまり身近な存在とはいえず、できるだけ距離を置くもの…という印象が強い。
しかし、これが芸術作品として使われると…
おもちゃ、時計、眼鏡、自転車、衣料、靴、楽器、携帯電話、パソコン、デジカメなどなど、ありとあらゆるさまざまな日用品やIT機器から、仕事中だったり、車や自転車を運転していたり…と活動中の人間や、美しい動植物など、これまで見たことのないレントゲン写真が多数掲載されている。
レントゲンで透過された写真は、元の被写体が簡単に想像できるものから、巻末の写真の解説を読まないとわからないモノも。
レントゲン写真は、当然すべてモノクロだし、単純に撮っただけでは、おもしろくない。
これは、あくまで芸術作品ということで、さまざまな工夫が試みられている。
対象物のイメージが付きやすいように、コンピュータで着色して、カラーの写真にしたり、奥行きや元の形をイメージさせたい場合は重ね撮りや、ピントをずらして撮影したり、巨大な被写体の場合だと何十枚、何百枚もの写真を合成している。
圧巻は、大型バスに乗客が乗ったままの写真や、なんと、格納庫の正面から撮影されたボーイング777が写った史上最大のレントゲン写真。
たしかに美しい。
本質は内面に宿るとか、美しさは内面からといった言葉があるが、それを実際に証明している気がした。
ただ同時に、余りに見えすぎてしまうことの怖さみたいなものも感じた。