ブラック企業、世にはばかる (光文社新書)/蟹沢 孝夫
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ブラック企業、世にはばかる (光文社新書) 蟹沢 孝夫 光文社 2010-04-16 |
いつのころからか、待遇や将来性などに問題のある会社が、ブラック企業と呼ばれるようになった。
ネットや雑誌でも時々見聞きする。
いろいろ原因はあろうが、こうした企業が出現する原因の一端は、業務が細分化されてしまっていることもあるかもしれない。
たとえば、本書で取り上げられた、あらゆる製品のユーザーサポートのような仕事の場合、とにかく問題を沈静化させて当たり前であり、単調な業務内容で長期間続けていても、スキルが蓄積しないと指摘する。
たしかに、ひとたび問題が発生すると、そのしわ寄せの多くは、消費者に近いところ…現場とか、末端で噴出する。
こういうところで働いても、けっして「努力は必ず報われる」ことはないという企業が存在するというのは、決して遠い世界の話ではないのだ。
本書とは、直接関係ないが、現在も続く、原発の事故にも通じるものがある気がした。
先日読んだ本では、基本的に、どんな努力も決して無駄にはならないという考えのもとに書かれていたが、どちらかといえば、こちらの本の方が、しっくりくる。
また、肉食系ブラック企業とか、草食系ブラック企業といった分類など、現在の労働環境の問題をわかりやすく解説して、読みやすい。
たしかに、国や企業、安さを追求する、われわれ国民にも、こうしたブラック企業が世にはばかる原因の一端はあるという指摘は、的を射ている。
しかし、人材紹介キャリアカウンセラーという著者の立場だからこそ言えるような、より具体的な対処方法を伝授してほしかった。