1964 ムーミンとミー
先日まで行っていたフィンランドと言えば、ムーミンの国。ムーミンについては、あまりよく知らないのだけれど、どこかほのぼのとした感じのお話だという印象を持っている。でも、その一方で、ミーやスナフキンなどの存在は、どこか陰のあるような感もあった。
同じ会社の“みん”さんから、こんな話を教えてもらった。
ムーミンには森の中にとってもお気に入りの場所があった。その日も木漏れ日のなかその場所に寝転んでお昼寝をしていた。するとチクッと痛みが走る。驚いてみてみるとたくさんの蟻がムーミンを噛んでいた。ムーミンは自分だけの秘密の場所を他の誰かに使われていると知ってひどく落ち込んでしまった。その様子に気づいたミーがムーミンにたずねた。ムーミンが事情を説明するとミーは胸をポンと叩いてこう言った。
「なんだ、簡単なことじゃない。アタシに任せるがいいさ。明日のお昼にそこへ行ってごらん。すべて解決しているよ。」
翌日のお昼、ムーミンは嬉々として秘密の場所へ向かった。
でもそこで見たものは、燃えて灰になってしまった美しかった花や草、そしてたくさんの蟻たち・・・
ムーミンはびっくりしてミーにたずねた。「なんでこんなひどいことをするんだ」
「だってアンタは蟻が邪魔だったんでしょう?そんなもの燃やしてしまえばいいじゃない。アンタの望んだとおりよ。これでこの場所はアンタだけのもの」ミーは笑って答えた。
みんさんが、ずいぶん前に読んで衝撃を受けたというムーミンの話。
実は、どうも実際の話とは若干異なっているらしいのだけれど、だいたいは合ってるようなので、みんさんの記憶のまま転載させてもらった。
とにかく激しいミーの行動が目を引く。確かにミーはかなりひどいことをしているし、ムーミンの驚きも理解できるが、よく考えてみると、単純にミーを責めることはできない気がする。自分のお気に入りの場所に、蟻がいたことに落ち込み、この蟻の「存在をなくしてしまいたい」という思いは、手段は違うにものの、目的を達成するという点では、ムーミンもミーと同じなのではないかと思える。
綺麗事で済ませなかったミーの行動は、きっと僕らに大事な何かを投げかけている。