白夜行/東野 圭吾

■文学・評論,龍的図書館

4087474399 白夜行
東野 圭吾

集英社 2002-05
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以前から自宅にあったのだけれど、あまりの分厚さにおじけづいていたのだが、ドラマ化されたということもあって、思い切って読んでみることにした。

主人公の心理描写が一切ないというのは、何かの解説を読んで知った。確かに、振り返って主人公の亮司と雪穂がどんな気持ちで行動していたのか…ということを思い返そうとしても全く思い出せない。考えてみたら、これはかなり新鮮なことだ。どんな物語でもたいていは主役の気持ちがもっとも大事な要素を占めるのが普通だ。それが全く欠けている。

いや欠けているのではなく、これこそがこの物語の一番のおもしろさなのかもしれない。登場人物がやたらと出てくるし、物語の期間も20年くらいにも渡っているので、ちょっとややこしいが、一気に読むことができた。

この20年という時間の経過が、大きな変化を物語全体にもたらしていて、ところどころで垣間見える世相も、とても興味深い。特にコンピュータ技術の進化と物語の重要な部分にも影響している。日本のコンピュータがまだ、PC-9801全盛だった時代のパソコンショップの様子とか、スーパーマリオブラザーズの爆発的な人気による海賊版の出現、キャッシュカードの偽造や、社内からプログラムを持ち出してライバル会社に持ち込むような話まで…。こういった分野に興味がある人にとっても面白いのではないかと思う。(もちろんこれはあくまでもこの話の一部なので、知らない人でもまったく問題ないですが…)

いろいろなことを想像させてくれる、これまでにない小説だと思った。まだ読んでない方は必見。

(2006.3.31) 【★★★★★】 -06/04/07更新