山手線誕生/中村 建治
![]() |
山手線誕生―半世紀かけて環状線をつなげた東京の鉄道史 中村 建治 イカロス出版 2005-06 |
この本が出版された去年(2005年)は山手線にとって節目の年だった。1885年(明治18年)品川-新宿-赤羽間に日本鉄道品川線(山手線の前身)が走り始めてから120周年、山手線として環状運転を開始した1925年(大正14年)から数えて、80周年を迎えた年だった。
ご存じの方も多いと思うが、山手線は最初から環状運転をしていたわけではなく、さまざまな紆余曲折を経ている。大隈重信、岩倉具視、伊藤博文といったそうそうたる面々が、今日の山手線になるまでに大きな貢献をしている。そうした山手線にまつわる歴史を丹念に追っている。当時の状況や彼らの会話などが生き生きと描かれている。史実に基づいたフィクションではあるが読みやすい。
山手線は、普段なにげなく利用しているが、その山手線の歴史を知ると見慣れた景色が変わって見えてくる。ちょっとしたカーブも理由があるのだ。
[田端~目白までのルート]
田端から目白までほぼ直線でつなぐ計画が、巣鴨監獄(現在のサンシャインシティ)を避けるために、ルートを北側に寄せることになり、本来想定していなかった池袋駅が誕生している。
[新橋(汐留)~東京までのルート]
汐留から東京駅に延長する計画では、このまま延長すると銀座を縦断することになり多額の用地買収費用がかかることもあって断念され、新橋から有楽町を経由して東京に至るルートに変更されている。